野党結集論議、最悪の国難に対処する政策を
来年参院選を前に野党間で自民・公明の与党に対抗するための構想が民主、共産、維新の各党内でさまざまに浮上している。野党がばらばらでは勝てないとの認識によるものだが、政権奪取を展望する以上、最悪の国難に対処し得る政策を練り上げて臨まなければ無責任な批判勢力にすぎない。
参院選へ共闘の動き
野党が共闘を強めたのは通常国会で安全保障関連法に反対することに手応えを感じたからだ。「戦争法」と呼ぶことで反対運動を扇動し、その勢力を結集すれば参院1人区の32選挙区で自民党候補に勝てると考え、共産党が安保関連法廃止の一点に絞った「国民連合政府」を呼び掛けたのが皮切りだ。
これに、民主党では共産党の選挙協力に頼りたい執行部に対し、党内から共産党とは組まずに維新の党との合併で新党結党を構想する「解党論」が浮上。維新の党はおおさか維新の会との分裂後の代表選で民主との再編が先か政策一致が先かの2候補による争いになっている。
問題なのは、これらの再編論議が参院1人区における野党各党の票の足し算に終始し、肝心の国家運営の議論が欠けていることだ。反安保法・反安倍政権の一点だけで合意し、他の相違を棚上げするような議論が先行するのは政権打倒しか目標がないからである。
既に我が国は政権交代を経験している。自民党も2度も野党に転落した。が、いずれも早い段階で政権に返り咲いた。反自民勢力に政権担当能力が欠如していたからにほかならない。
民主党政権時代には、東日本大震災と大津波による原発事故という非常事態が発生した。竹島、北方領土などの領土問題で韓国、ロシアから攻勢を受ける外交的後退があったほか、尖閣諸島周辺で強引な海洋進出を行う中国との間ではかつてなく緊張が高まった。
また、フランスの凄惨な同時無差別テロ事件は過激派組織「イスラム国(IS)」のテロ拡散が国際社会に抜き差しならぬ事態を招くことを露(あら)わにしており、大規模自然災害とともにテロ事件の非常事態も想定する必要がある。フランスは非常事態宣言を発令しており、欧州連合(EU)は初の集団的自衛権行使を決めた。
フランスではテロに対処するため憲法改正をする方向だ。政権交代し社会党政権となったが、最悪の国難に遭遇し、必要ならば憲法から法整備に着手する正常な立憲主義が根付いている。
ところが、我が国においては政府が自衛権をめぐって憲法解釈し、これに基づく立法に野党が反対して改憲も許さないというパターンに陥っている。衆参両院で3分の2の国会議員が合意して改憲発議に至らないようにとことん妨害する共産党はじめ野党勢力の姿勢は本末転倒である。欧州諸国の非常事態を対岸の火事としてはならない。
現実的でなければ論外
戦争、大規模自然災害、人災たるテロなど最悪の国難にどう対処するか。現実的な安全保障と非常事態対処の政策を打ち出した野党勢力でなければ、政権の選択肢に含めることは論外である。
(1月26日付社説)