閉会中審査、改正につながる憲法論議を


 衆参両院の予算委員会で閉会中審査が行われ、当面する政治課題について質疑した。政府・与党が安全保障関連法を成立させるため、通常国会を9月まで延長したこともあり、野党側が要求した臨時国会に代わって開いたものだ。

 内閣改造、環太平洋連携協定(TPP)交渉の妥結、安保法制をめぐって焦点となった憲法などについて議論し、来年通常国会に向けた論点を確認したものになった。

 臨時国会に代わって開く

 臨時国会が開かれないのは、やはり通常国会の大幅延長の影響である。第3次安倍改造内閣が10月に発足し、安倍晋三首相の所信表明や閣僚たちの施政について国会で質疑を交わすべきだとの野党側の主張は理に適うものだ。

 だが、国連、中央アジア、韓国などでの安倍首相の外交、TPP合意への対応や軽減税率導入、「1億総活躍社会」を掲げ、アベノミクス「新3本の矢」を打ち出した新内閣の政策の裏付けとなる来年度予算編成も控えるなど、日程が窮屈なうえ審議の準備が十分ではない。

 このため、TPPについて首相は「農家の不安に寄り添いながら、政府全体で万全の対策を取りまとめる」などの抱負を表明するにとどまった。「1億総活躍社会」や「新3本の矢」に関しても「GDP(国内総生産)600兆円を目指す」といった内閣改造時の記者会見を繰り返したものになった。

 こうした課題については、政権側が早期に具体策をまとめなければならない。「新3本の矢」のGDP600兆円、希望出生率1・8、介護離職ゼロを達成するため、首相が加藤勝信1億総活躍担当相に指示した具体的なアクションプランの取りまとめが待たれよう。準備が整わなければ、国会論戦も深めようがない。

 一方、野党側も安保法制反対に一点集中した後遺症から諸課題に向き合う対応に欠け、もっぱら閣僚の不祥事などを追及して政権イメージを低下させようとしている。閣僚が襟を正して職務に臨むことは当然だが、スキャンダルによる対立で時間を費やすだけの国会審議は避けたいものだ。

 ただ、安保法制をめぐる議論で憲法が焦点になったことについて、民主党の岡田克也代表は衆院予算委で首相に9条を含む憲法改正について質問している。首相は「現段階では国民的議論を深めることが大切だ」と答弁したが、そのためには国民の代表として国会に議席を得た衆参両院議員らが、憲法審査会でしっかりとした議論をして憲法改正原案をまとめることが必須の条件ではないか。

 また、参院予算委では自民党の山谷えり子議員が憲法にない緊急事態条項に関して質問し、首相は「緊急時に国民の安全を守るために、国家、国民自らがどのような役割を果たすべきかを憲法にどう位置付けるかは、極めて重く大切な課題だ」と答弁している。

 改憲原案を具体化せよ

 憲法問題は以前からの論議を経て改憲が可能な法整備がなされたところで、国会が改憲原案を具体化していくべきだ。

(11月12日付社説)