国滅ぼす共産党戦略に警戒を
日本共産党が、安全保障関連法に反対した民主党など各野党に向けて「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」実現を呼び掛け、来夏参院選での野党共闘を構想している。
民主党の岡田克也代表は「特に選挙協力について重要な提案をいただいた」と歓迎しているが、参院選の争点に共産党参加の政府を認めるか否かが浮上することになる。
米国・財界敵視の綱領
米国と財界を敵視する綱領を持つ共産党が構想する「国民連合政府」は、綱領実現への歩みを一歩進めようとするものだ。安保法制を争点にした選挙は日本の命運を決するものとなる。日米同盟によって自由主義陣営で復興と発展を成し遂げた国家の土台を揺るがすことがあってはならない。
安保法成立に対する海外の反応を見れば、米国、オーストラリア、フィリピンなどが歓迎する一方、軍備を拡大する中国や核開発を進める北朝鮮など共産党独裁が続く国家が批判している。中国の海洋進出と南シナ海での力による現状変更は国際法への挑戦であり、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺の領海を侵犯されている我が国にとっても深刻な問題だ。
安保法成立のタイミングで共産党が「連合政府」を打ち出したのは、同党が主催者として参画する「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」のデモに、岡田代表をはじめ安保法に反対した野党幹部らが参加するなどの手応えがあったからだろう。
民主党は共産党支持者らの声援を自らへの国民の支持として受け止め、法案廃案に向けて批判をエスカレートさせた。採決をめぐっては、長時間の演説で議事を引き延ばすなど徹底抗戦している。民主党が反安保法で同調すると見ての「連合政府」の呼び掛けだ。
共産党の念頭にあるのは、沖縄県で米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する翁長県政を実現したことだ。自民党県連幹事長を務めた翁長雄志氏を担ぐことによって県政与党となり、翁長知事は共産党の思惑通りに反米軍基地の言動を強めて国内外で活動し、政府とも対決姿勢を取っている。
志位和夫委員長が発表した文書でも「昨年の総選挙の沖縄1~4区の小選挙区選挙で行った、『米軍新基地建設反対』を掲げての選挙協力」に言及しており、参院選で「連合政府」を目指して選挙協力を行う構えだ。同文書では「この連合政府は、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での合意を基礎にした政府であり、その性格は暫定的なもの」というが、翁長知事の行動に象徴されるように、実現すれば組織力の強い共産党の影響が支配的となろう。
責任ある野党が必要
日米同盟の後退が国難を招くことは民主党首班の連立政権で経験済みだ。政府の仕事は同法廃止の一点だけではない。共産党が参加すれば、寄り合い所帯の弊害どころかさらに深刻な事態に陥る。国を滅ぼす共産党の戦略には警戒を要する。健全な二大政党制の実現には、今後の再編により責任ある野党の出現が望まれる。
(9月24日付社説)