自民総裁再選、まずは安保法案成立へ結束を


 自民党総裁選で安倍晋三首相が無投票再選を決めた。全7派閥が首相を支持し挙党態勢を築いた結果だ。

 今後3年の任期が与えられ、いよいよ改革の本丸である憲法改正に乗り出さねばならないが、国会の最終盤に国家の安全の根幹にかかわる最重要法案が残っている。まずは来週にも採決が予想される安全保障関連法案の成立に向けて党の結束を維持せねばならない。

 野田氏出馬断念は当然

 3度の国政選挙に圧勝した安倍首相の総裁続投の流れは既にできていた。全派閥に加え谷垣禎一幹事長、石破茂地方創生担当相らも支持を表明していたため、総裁選に突入しても再選されていたのは間違いない。

 焦点は、野田聖子前総務会長が20人の推薦人を集めて出馬することになるか否かだった。もし出馬となれば、安倍首相は総裁選と国会と両方への対応を余儀なくされたろう。野党側が、総裁・首相が代わるかもしれないのに安保法案の審議は続行できないといった口実で時間を稼ぎ、採決させない戦術を取る恐れもあった。

 野田氏は「義を見てせざるは勇なきなり」と語ったが、その「義」とは何だったのか。首相との対立軸はなく、人口減問題や女性の活躍推進を訴える予定だったというが、取り立てて今この時に議論する必要はない。出馬断念は当然である。

 中国の軍事パレードが示した軍拡や東・南シナ海への法を無視した力ずくの進出、北朝鮮の核・ミサイル開発などの緊迫した極東安保情勢を考えれば、わが国の抑止力を高める安保法案を成立させることこそ「義」であり、困難を伴っても国民の理解を少しでも深める努力をすることこそ「勇」気ある政治活動のはずだ。自民党全体がその大義に向け一致結束して臨むことを求めたい。

 首相にとって次の課題は、内閣改造と党役員人事だ。首相は再選を受け「アベノミクスは道半ばだ」と語り、経済再生を柱に政権運営に取り組む姿勢を鮮明にした。基本的には従来路線の堅持であるため、重要閣僚は留任し大幅な人事とはならない見通しである。

 ただ全派閥がこぞって再選を支持した背景には、入閣待機組の処遇への期待がある。首相は「結果を出していくことで責任を果たしていく」と語っており、スキャンダル調査を行った上での適材適所の人選を心掛けねばならない。

 首相は「9カ月前の総選挙の結果(を受け)、今まさにその公約を進めている最中だ」とも語った。その公約の柱は、経済再生のほかに財政再建、復興加速、地方創生、教育再生、積極的平和外交であり、「時代が求める」憲法改正である。

 「志」をさらに磨け

 特に政府・与党は今回の安保法案が憲法改正をしないで対応できるぎりぎりの合憲法案だと強調してきた。成立後、さらに情勢が緊迫化した時には改憲に踏み込む覚悟が求められる。

 首相は「志」をさらに磨き、改憲原案作成に向けた議論の活発化とともに国民の世論の盛り上げにも本腰を入れて取り組むことが肝要だ。

(9月9日付社説)