自民党勉強会、「異論封じ」になってはならぬ
自民党若手議員の勉強会でのマスコミ批判が問題視されている。国会が平和安全法制関連法案を審議する重大な時期に、深慮を欠いた言動と言わざるを得ない。政権与党としての緊張感が希薄なのではないか。ただ、この問題に対する野党およびメディアの反応は度を過ぎている。
一私人の発言を問題視
もとより言論・報道の自由は民主主義の根幹をなすもので、権力で規制するようなことがあってはならない。当然のことだ。だが、勉強会は私的な会合で、「問題発言」を行ったのは一私人だ。これをもって「言論統制」などとするのは飛躍が過ぎる。自由闊達(かったつ)な論議を萎縮させ、異論封じになりかねない。
若手議員がさまざまな講師を招いて勉強会を開き、見識を広げて政策に生かす。大いに結構なことだ。そんな私的な会合での発言をいちいち批判し政治問題化するのは、それこそ言論統制のそしりを免れない。
問題視されているのは、作家の百田尚樹氏の「沖縄の2紙をつぶせ」や、出席議員の「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。文化人が経団連に働きかけてほしい」などの発言だ。「安倍政権をつぶせ」との言論が保障されているように、百田氏のメディア批判も保障されなければならない。その内容を批判するのは一向に構わないが、個人攻撃で異論を封じようとするのは横暴だ。
マスコミと広告料をめぐる議員の発言は、権力で規制しようというのであれば、言論・報道の自由を侵害するもので断じて容認できない。だが、発言は民間の文化人についてのもので権力行使とは関係ない。むろん政権与党の一員である議員として誤解を招いてはなるまい。
安倍晋三首相は国会審議で「党において、さまざまな議論が行われるが、基本的には自民党は自由と民主主義を大切にする政党で、当然、報道の自由は民主主義の根幹だ」と述べ、メディア規制を否定している。党内の自由な論議があってこその「自由民主党」だ。その意味で、勉強会代表の木原稔党青年局長を更迭し1年間の役職停止処分にしたのは、国会運営への配慮があったとしても疑問が残る。
メディアの報道姿勢も問われるべきだ。百田氏は自らのフェイスブックで、マスコミのスポンサーへの圧力について「それはしてはいけない」と即座に否定したが、この言葉を報道してくれないと憤慨している。安倍政権登場後、一部メディアの恣意(しい)的報道が目立つが、勉強会についても当てはまる。
平和安全法制をめぐる論議では昨年5月、安倍首相が集団的自衛権行使の限定容認に向け、憲法解釈変更を検討すると表明するや否や、一部の野党やメディアは中身も検証せず、「戦争できる国」「立憲主義の破壊」など不毛のレッテル貼りに走った。今もその姿勢は変わらない。
野党は建設的な議論を
「政権批判」は言論の自由だ。だが、虚偽報道や偏向報道があってはならない。そこを自民党は問題にし、勉強会もあったという側面も見なければならない。メディアも自省し、野党は党利党略的な追及に終始せず、建設的な議論こそ行うべきだ。
(6月29日付社説)