米中対話、中国の頑なな姿勢が懸念増す
米国と中国が重要懸案について話し合う「米中戦略・経済対話」がワシントンで行われ、双方の閣僚級が安全保障から経済まで幅広い課題をめぐって議論した。
米中両国は「成果」とともに直接対話の必要性を強調し、9月に予定される中国の習近平国家主席の訪米を前に両国関係の大切さを確認した。ただ、重要な課題では「率直な議論が交わされた」としながらも、両国の溝が埋まることなく、平行線で終わったことを指摘せざるを得ない。
両国の対立は解けず
共同記者会見で、ルー米財務長官は経済分野における合意が70項目以上に達したと述べ、中国側は楊潔篪国務委員が、かねて中国が主張する「新型大国関係」の構築を論議して「戦略分野で100項目以上の合意を得た」と語った。二酸化炭素(CO2)削減や海洋資源の保全、テロ対策での協力、米中投資協定の加速などが挙げられる。
米中双方が協力分野を拡大した点は特筆される一方、米側はサイバー問題や海洋での中国の行動をめぐって懸念を表明、重要な懸案事項で両国の対立は解けなかった。
米側は、中国による南沙(英語名スプラトリー)諸島の岩礁埋め立てについて「南シナ海を不安定化」させる行動として、即時停止を求めてきた。これについて、楊国務委員は「領土主権と海洋上の権利、利益は断固として守る」ことを改めて表明し、「中国の主権と領土の一体性を米国が尊重することが重要だ」と主張した。
中国は南シナ海の地図上に「九段線」という境界線を引いて、多くの海域を自国のものだとしている。だが国際法では認められておらず、南沙諸島の領有権を主張するフィリピンやベトナムは反発している。
中国は今月中旬、埋め立てを近く完了すると表明した。だが、3000㍍級の滑走路や軍事施設の整備などを続ける方針に変わりはない。中国の言動は身勝手極まりないものであり、決して容認できない。
さらに米国は、米企業に対する中国のサイバー攻撃や米連邦政府職員ら約400万人の個人情報流出への中国の関与疑惑などに深い懸念を表明、サイバー空間での政府間行動の共通ルール化を求めた。これに対し、中国側はいかなるハッキングもしていないと答え、「ハッキングに断固として反対する」と繰り返し述べた。
オバマ米大統領は中国側代表と会談し、中国の海洋進出やサイバー問題に関し、「緊張を緩和する具体的な措置」を取るよう、自ら異例の呼び掛けを行った。しかし、これらの問題については平行線で対話が終了した事実を重く受け止めなければならない。
オバマ政権は圧力掛けよ
「戦略・経済対話」のような外交交渉を否定するものではない。だが、中国が対話で聞く耳を持たないとすれば、国際的なルールや規範を守り、力ずくで現状変更をしないことを強調する米国には、圧力を掛ける対中外交こそ必要である。アジア太平洋を重視するオバマ政権は、躊躇(ちゅうちょ)してはならない。
(6月28日付社説)