岡田民主党新代表、明確な政策提示が不可欠だ
民主党の新たな代表に岡田克也氏が選ばれた。岡田新代表は党再生さらには野党再編も視野に「政権を担える政党」への脱皮を目指す。だが、その道筋は代表選を通じても不透明なままだ。これでは国民の不信感を払拭(ふっしょく)できまい。
示されなかった国家像
わが国では冷戦が終焉した1990年代以降、二大政党制に誘導する選挙制度が導入され、政権交代可能な責任野党の出現が望まれた。民主党はその役割を担うと期待され、2009年に国民から政権を委ねられたが、三日天下のように3年余で崩壊した。代表選を見る限り、その反省が生かされているとは思えない。
第一に、安心して政権交代を実現するには与野党間に「共通の価値観」が必要だが、代表選では自民党との「違い」ばかりを競い合い、確固たる国家像はついぞ示されなかった。
政党は与野党を問わず、自由と民主主義を基調とする国家像を共有すべきだ。外交・安保の基本政策で揺れ動くようなことがあれば、厳しい国際情勢の中で日本は立ち行かなくなる。だから代表選ではまず、外交・安保政策を明示すべきだった。
だが、集団的自衛権行使問題一つとっても3候補の意見は異なり、岡田氏に至っては「(問題を)整理して議論することが大事だ」と、リーダーらしからぬ発言に終始した。
民主党は外交・安保政策で挙党一致が困難な実態を改めてさらけ出したと言える。憲法問題でも曖昧な姿勢が目立った。これでは政権交代可能な政党として合格点を与えられない。
第二に、政権を担うには一部の利害を代表するのではなく、真の意味の「国民政党」に脱皮する必要がある。だが、代表選では従来の党派性から抜け出せなかった。
これまで民主党で問題視されてきたのは、日教組や自治労をはじめ左翼勢力が根強い官公労などに依存し、そのイデオロギーに左右されてきたことだ。代表選でも垣間見られた。
例えば細野豪志氏は安倍自民党の「家族主義」との違いを強調するため、ジェンダーフリーや選択的夫婦別姓の導入をほのめかした。代表選の第1回投票で細野氏に後れを取った岡田陣営は、長妻昭氏に投じた票を獲得するために旧社会党系に人事などの優遇策を示して取り込んだと伝えられる。
これではイデオロギー支配や労組主導の悪しき体質から脱皮できない。岡田代表は人事だけでなく政策でも党内融和を優先させるつもりだろうか。それでは、従来の玉虫色の政策提示に終始するだろう。
「誰が代表になるかより、代表になって何をするのか」。代表選の期間中は街中でこんな声がよく聞かれた。「政策を党内でまとめられないようでは、誰が代表になっても同じ」というシビアな意見もあった。
抵抗野党に明日はない
岡田代表は就任挨拶で「政権を担える政党と思ってもらえるよう、安倍自民党としっかり戦っていきたい」と述べたが、「反自民」「反安倍」は抵抗野党の態度だ。政策を明示しなければ民主党に明日はない。
(1月19日付社説)