ユーラシア経済同盟、協力関係の構築は前途多難
ロシア、ベラルーシ、カザフスタンおよびアルメニアの4カ国による「ユーラシア経済同盟(EEU)」が年初に正式発足した。これらの国々は1991年のソ連解体と同時に創設された独立国家共同体(CIS)メンバー国でもある。しかし加盟各国が協力関係を築いていけるかどうか、情勢は不透明だ。
ウクライナ危機が影響
EEUは関税の免除だけでなく、モノ、ヒト、サービス、資本の自由な移動を段階的に実現した後、金融、通貨、エネルギー分野で政策の共通化を図る。
ロシア、ベラルーシ、カザフの3カ国は今年1月1日にEEUを発足させ、アルメニアは2日に予定通り加盟。キルギスは5月に正式に加わる見込みで、タジキスタンの参加もその後実現するとみられている。
1月現在、EEU4カ国の総面積は2000万平方㌔強(世界の国土面積の約15%)、総人口は推定約1億8300万人、国内総生産(GDP)合計は約4兆米㌦を上回る規模だ。世界の天然ガス埋蔵量の20%、原油の15%を保有する。
主導するロシアのプーチン大統領は、EEUを欧州連合(EU)のような主権国家群の「強力な超国家同盟」に仕上げる計画。つまり、欧州とアジアの懸け橋となり、EU、米国、中国やインドと対抗するために、経済、法制度、関税サービス、および軍事力を統合する計画だといわれる(2014年2月18日付英紙ガーディアン)。また、EU同様、ドル支配から逃れるために、共通通貨の発行も視野に入れているとされる。
しかし、こうした目論みの前途には厳しい現実が立ちはだかっている。第一は、旧ソ連でロシアに次ぐ第2の共和国だったウクライナの取り込みの失敗である。ウクライナは13年8月、オブザーバーとしてのEEU加盟を表明したが、昨年2月の政権交代で加盟は絶望的になった。ウクライナが入るか否かでは、EEUの重みが全く異なる。旧ソ連構成国のモルドバ、グルジアの参加も見込み薄だ。
第二に、ロシア経済の悪化である。ウクライナ危機に伴う対露制裁、国際的な原油価格の下落、昨年の主要決済通貨ルーブルの暴落(対ドル40%超)などの阻害要因は年が明けても重くのしかかっている。他の加盟諸国もロシアとの経済的絆が強いだけに、大なり小なり、同じような経済危機に直面している。
第三に、一部加盟国から聞こえてくる不協和音だ。ベラルーシのルカシェンコ大統領は昨年12月、参加国首脳会談後の共同記者会見でEEUの準備状況に不満を表明。カザフのナザルバエフ大統領は「EEUは国家の主権を損なわない」点を再三強調し、経済を通じてロシアが政治的な圧力を強める可能性に警戒感をにじませた。
露は国際社会と協調を
カザフもベラルーシも国内に多くのロシア系住民を抱える。ロシアが「ロシア系住民保護」を名目にウクライナ南部クリミア半島を併合したことで不安を感じるのは当然だろう。このままではロシアは孤立を深めるばかりだ。プーチン政権は独善的な外交政策を見直し、国際社会と協調していく必要がある。
(1月20付社説)