衆院選公示、公約への説得力を問いたい


 第47回衆院選が公示される。12日間の選挙戦で注目したいのは、各党党首が自党の選挙公約の実現性について、どれだけ説得力をもって語れるかだ。単なる公約の繰り返しでなく、具体策を掘り下げつつ他党との違いを明確にし、どの党が日本の明るい未来図を描けるのか。その論戦の活発化を期待したい。

 一方、突然の衆院解散に戸惑う有権者も多いだろう。ただ、現在の政治に対して意思表示をする好機ととらえ、各候補者のアピールを精査して政権選択の一票を投じたい。

 改憲の具体策に言及も

 安倍晋三首相は選挙公約の中で、景気回復には「この道しかない」と強調した。アベノミクスが成功するのか否かのカギは、地方に景気回復の実感を行き届かせることにある。そのためには、賃金のアップによる経済の好循環を本格化させることが必要だが、地方や中小企業の賃金底上げには至っていない。大多数の中小企業の経営者に「賃上げすることこそが成長戦略の命運と自社の将来を決する」という思いになるよう説得力をもって訴え切れるのかが問われる。

 一方、「今こそ、流れを変える時」と主張するのが民主党だ。アベノミクスに代えて「厚く豊かな中間層」を復活させるために「柔軟な金融政策」「人への投資」「未来につながる成長戦略」の3本柱を挙げる。だが、最低保障年金制度の創設や農業者戸別所得補償制度など財源を示さずに訴えても、民主党の政権獲得時の根拠のないバラマキ政策を想起させるだけで理解は得られまい。アベノミクスの方向性を評価する維新の党も電力自由化の推進や全国農業協同組合中央会(JA全中)の抜本改革の道筋についてもっと詳細に語ることを求める。

 自民、民主両党の党首の第一声が福島になるのは、原発再稼働を含むエネルギー政策を意識してのことだろう。原発は来年早々に川内原発が再稼働する。政府が原発を重要なベースロード電源と位置付けるのは妥当であり、その後も続々と再稼働させていくべきだ。原発ゼロを主張する野党は、先進国中、日本だけが化石燃料を90%以上も燃やし、温室効果ガスを放出し続けている現状をどうとらえているのか。「再生可能エネルギーの最大限導入」(民主党公約)に向けてのロードマップも示すべきである。

 安倍首相は安全保障政策の立て直しについても「この道しかない」と強調している。集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更の閣議決定を踏まえた安保法制整備の道筋の確かさを訴えたわけだが、それは当然で堂々と訴えるべきだ。ただ、「誇りある日本、世界の中心で輝く日本をともに取り戻そう」と言うなら、「この道」の先のどこに憲法改正という最重要課題を位置付けているのかが不明だ。改正原案の内容、提出時期をどうするかなど具体策に言及してもらいたい。

 トータルで投票判断を

 今回の選挙で国民に審判を仰ぐべきは日本の針路に深くかかわるトータルな問題であるべきだ。社会保障、外交、教育再生などでも論戦を深め投票の判断にしたい。

(12月2日付社説)