欠陥エアバッグ、安全最優先で誠意ある対応を


 自動車部品大手タカタのエアバッグをめぐる問題が深刻化している。作動した際に破裂して金属片が飛び散る事故が発生したため、世界で1300万台以上がリコールされた。

 米国とマレーシアでは死亡事故も起きている。タカタは安全最優先で誠意ある対応を急ぐべきだ。

 全米リコールを強制

 米運輸省道路交通安全局(NHTSA)はタカタに、米南部に限定している運転席用エアバッグのリコールを直ちに全米に拡大するよう要求した。実施中の地域外でも2件の事故が発生したことによるものだ。

 2日までにリコールを届け出なければ、1台につき最高7000㌦(約82万円)の民事制裁金を科す可能性もあると警告している。全米リコールを事実上強制するものだ。

 米国では早くから議会や消費者から批判が出ていたが、タカタや自動車メーカーの対応は後手に回った。NHTSAによる異例のリコール強制は、それだけ批判が強まっているためだとみていい。

 その意味で最も不可解なのは、いまだにタカタの経営トップが記者会見などの場で説明を行っていないことだ。こうした姿勢では、安全性軽視とも取られかねない。

 タカタは世界2位のエアバッグメーカーであり、日米欧の自動車メーカーに製品を供給している。消費者に不安が広がっていることへの責任を自覚すべきだ。事態収拾と再発防止に全力を挙げる必要がある。

 危機的な状況を招いたのは、タカタが海外展開を急いだ2000年代初頭のずさんな管理体制だ。問題のエアバッグは、主に00~02年に米国とメキシコの工場で生産された。エアバッグを膨らませるガス発生剤の製造過程で、不良品を除外する装置を作動し忘れたり、2回必要なプレス工程を1回省いたり、保管時に湿度の管理を怠ったりといった初歩的なミスが相次いだことが欠陥の原因だ。

 また、タカタの最大の取引先であるホンダは、08年以降に9回リコールを実施。リコール発表後に対象外のエアバッグで事故が起こり、新たな製造ミスが発覚してリコールを繰り返す事態に陥った。

 このほどNHTSAに対して死傷事故情報の報告漏れがあったことも分かり、不信に拍車を掛ける結果となった。

 国内では既にタカタ製エアバッグを積んだ11社製の約261万台がリコールされているが、同社が全米でリコールに踏み切った場合、日本国内でも対象が拡大し、新たに約20万台がリコールされる見通しだ。太田昭宏国土交通相は「日本メーカーへの高い評価を揺るがす状況で、一刻も早く解決するべきだ」と話した。

 海外でも品質管理徹底を

 09~10年のトヨタ自動車の品質問題も、急速な海外展開が一因とされた。タカタの危機は、グローバル化を急ぐ中で品質管理を徹底できなかったことによるものだ。

 特に人命に関わる製品のメーカーは教訓とし、海外でも安全最優先の管理体制構築に万全を期すべきだ。

(12月1日付社説)