女性2閣僚辞任、首相は任命責任の重さ自覚を
「女性の活躍」を改造内閣の看板に掲げて起用された女性2閣僚の小渕優子経済産業相と松島みどり法相が就任わずか48日で辞任した。第2次政権初の辞任でもあり、安倍政権には大きな痛手となろう。安倍晋三首相は任命責任の重さを自覚し、襟を正して適材適所の人事を行い、改革の実績を出して信頼回復を図るべきである。
安全運転で落とし穴も
小渕氏が辞任に追い込まれたのは、関係団体が行った観劇ツアー2年分の支出が収入を計約2600万円上回っていたことが発覚し、有権者への利益供与を禁じた公職選挙法違反などの疑いが持たれたからだ。「私自身も分からないことが多すぎる」と小渕氏は語ったが、政治資金の出入りをすべて他人任せにした甘さと緊張感のなさは猛省しなければならない。
松島氏は、地元選挙区で政策を書き込んだ「うちわ」を配布したことが公職選挙法違反の疑いがあるとして告発されたことが理由だ。松島氏本人は「法に触れることをしたとは考えていない」と語ったが、「国政に遅滞をもたらした」ことは事実だ。今後の国会審議を考えればやむを得ない判断だと言える。
政府・与党としては今後、公職選挙法に絡む「政治とカネ」の問題には終止符を打つべく、透明性を高める不断の努力をさらに徹底して行うべきである。
安倍首相が自省すべきは、女性重視を強調するあまり、適材適所の人事を行ったのかどうかだ。女性閣僚を過去最高の5人起用したのはいいが、果たして適任だったのか。小渕氏に経済再生、原発などエネルギー問題をリードしていく専門性と指導力があったのか。松島氏の法務行政も同様だ。性別にとらわれず国政を推進していく能力を持った大臣の就任とリーダーシップの発揮こそ国民は望んでいるのである。
後任には、経産相に宮沢洋一自民党政調会長代理、法相に上川陽子元少子化担当相が内定した。首相は「経済最優先で政策を前に進めなければならない」と語ったが、実績を上げて信頼を回復することに専念してもらいたい。
今国会で安倍首相は、野党からも共感を得られやすい「地方創生」と「女性重視」を二大テーマに掲げている。だが、中国の不法な海洋進出や北朝鮮のミサイル問題などが深刻化しているアジア情勢やシリアなど世界情勢の緊迫化を念頭に置けば、集団的自衛権行使を容認することを含めた安全保障関連の法制化を急がねばならないはずだ。
それを先送りして内閣支持率を高めることばかりを優先し安全運転で乗り切ろうと甘く考えているとすれば、落とし穴にはまらないとも限らない。アベノミクスによる経済再生はもとより、本来の安倍カラーである憲法改正や教育改革にももっと前向きに取り組むべきでないか。
政策論戦を聞きたい
一方、野党は政治倫理審査会の開催で共闘し追及を強める見通しだが、重要法案の国会審議に影響を与えないよう配慮すべきだ。内閣支持率が低下した分、野党の支持率が上昇するかと言えばそうはなるまい。与野党の真剣な政策論戦を聞きたい。
(10月21日付社説)