皇后陛下傘寿、心からのお祝いと感謝を
皇后陛下はきょう80歳の傘寿を迎えられた。心からお祝いを申し上げたい。
天皇陛下が昨年12月23日、80歳の誕生日を迎え、両陛下がともに傘寿となられたことは、国民にとって大きな喜びである。
天皇陛下に寄り添われ
皇后さまは傘寿を迎えるに当たり文書でお言葉を発表され、「(天皇陛下が)時に厳しく、しかしどのような時にも寛容に導いて下さり、私が今日まで来られたのは、このお陰であったと思います」と振り返られた。
重要な式典や様々な会合、外国御訪問など、陛下のお側に皇后さまが寄り添っておられるお姿は、いつ拝見しても安らぎを与えてくれる。
われわれ国民の皇后さまへの感謝は、何よりまず陛下を支えてこられたことに対するものであるべきだろう。陛下は平成24年2月、心臓の冠動脈バイパス手術を受けられたが、皇后さまは毎日のように病院にお泊まりになり、常にお側にあった。陛下の順調な御回復には、担当医たちの努力もさることながら、皇后さまのお力が大きかった。
両陛下は常に「国民とともに」のお気持ちで、国家と国民の安寧の祈りを捧げておられる。自然災害の多発する日本で、被災者に寄り添い、慰め励ましてこられた。今年も広島の土砂災害や御嶽山の噴火などが相次いだ。皇后さまは傘寿のお言葉で「犠牲者の冥福を祈り、遺族の方々の深い悲しみと、未だ、行方の分からぬ犠牲者の身内の方々の心労をお察しいたします」と気遣われた。
皇后さまの祈りは、日本だけにとどまるものではない。平成10年にインドで開かれた国際児童図書評議会に送られたビデオメッセージ「子供の本を通しての平和――子供時代の読書の思い出」は、世界の人々に深い感銘を与えたが、世界の子供たちの健やかな成長と福祉への願いが溢れる講演であった。
傘寿のお言葉でも、来年が戦後70年となることを念頭に「平和の恩恵に与(あずか)っている私たち皆が、たえず平和を志向し、国内外を問わず、争いや苦しみの芽となるものを摘み続ける努力を積み重ねていくことが大切ではないか」と語られた。
両陛下の外国御訪問による国際的な友好親善がもたらした恩恵は誠に大きいものがある。自然体での睦まじいお姿は、海外でも評判である。
クリントン前米国務長官は日経新聞のインタビューで、皇后さまについて「彼女には深く個人的な愛情を感じる」と述べ、「優雅さ、聡明さ、親切さ、議論しやすい率直さ」を指摘。「日本社会の優しくも強いシンボルだと思う」と話している。「優しくも強い」という表現は、女性ならではの深い洞察によるものだ。日本国の慈母の背後の強さを改めて思わせられる。昭和8年生まれの陛下と9年生まれの皇后さまは、激動の時代に幼少年期を過ごされ、その後の様々な苦難を越えてこられた。だからこその優しさに違いない。
御無理なさらないように
忙しく御公務に励まれる両陛下だが、どうぞ御無理をなさらないようにと申し上げたい。側近の人々にはさらにしっかりしたサポートを求めたい。
(10月20付社説)