第2次安倍改造内閣、地方が繁栄する経済好循環を


 第2次安倍改造内閣が発足した。組閣の目玉人事は石破茂地方創生担当相、有村治子女性活躍担当相だ。過疎・格差に悩む地方に活力をもたらすことが、改造内閣の最優先課題である経済成長とデフレ脱却に直結する。地方が繁栄する経済好循環の実現を期待したい。

地方創生担当相に石破氏

 我が国は内憂外患の状況にあるが、通常国会まで安倍政権は我が国の尖閣諸島への領有の野心を露(あら)わにした中国の海洋進出など外患への対処に追われた。これに自民、公明の与党協議を経て集団的自衛権の一部行使を容認する閣議決定を7月1日に行ったことにより、今後の安全保障関連法制整備への道筋を付けたと言えよう。

 これからは内憂への対処だ。5月に日本創成会議などが人口減少によって多くの地方自治体が消滅するとの推計を発表し、6月に政府の経済財政諮問会議は我が国の人口1億人を維持することを盛り込んだ「骨太の方針」を決定した。人口減少が日本経済の低迷の原因となっており、特に地方で深刻な状況だ。

 安倍晋三首相は記者会見で「経済優先でデフレからの脱却を目指し、成長戦略の実行に全力を尽くす」と表明したが、どこまで「骨太の方針」の人口減少対策が進むかが成果を占うものとなろう。これまで地方経済の疲弊から東京など大都市圏へ若者の人口移動が起こり、一極集中した出産・子育てに適さない都市で晩婚晩産という少子化へのスパイラルが進行してきた。

 地方政策の権限を集中した司令塔を置くとして地方創生担当相を新設し、石破前自民党幹事長を抜擢(ばってき)したことを安倍首相は記者会見で真っ先に紹介したが、近年にない地方重視は新しい試みとして期待したい。

 地方での法人税優遇などが検討されているが、一極集中する人口の流れを変えるためには働き場所を分散し、新産業を創出する必要がある。また、自然災害が猛威を振るっているところ、防災・減災のための国土強靱(きょうじん)化も欠かせない。

 また、出生率向上のための施策が肝要だ。少子化問題は新設された女性活躍担当相の管轄になる。人口減少が経済に深刻な影響を与えるのは生産活動の中核をなす年齢層が細るためで、女性の活躍を期待するのは一理ある。女性が能力を社会的に発揮するのは有意義なことだ。

 ただし、女性が企業戦士のように働くことが男女平等であり男女共同参画社会の実現だと言ってしまえば、少子化問題は解決できないだろう。少子化対策は、結婚する男性と女性を念頭に置くべきだ。子供を産み育てる女性を尊重したい。

 働きやすく結婚・出産しやすい環境を、特に地方で創出する知恵と工夫が必要であり、社会的な意識改革も不可欠だ。若年層の雇用の安定はじめ、子供への予算配分、第3子以降への支援充実の具現化が求められる。

家族重視の道徳教育を

 さらには教科化が検討される「道徳」で親兄弟ら家族と生まれてくる命を大切にする教育がなされるべきだ。防衛・安全保障も身近な命を守ることに繋がる。地方創生が日本再生に結び付くことを期待したい。

(9月4日付社説)