ガザ停戦、終わりのない不毛な戦い


 イスラエルとイスラム過激組織ハマスとの間の無期限停戦が発効して1週間、今のところパレスチナ自治区ガザ地区の平静は保たれている。だが、対立の構図に変わりはなく、このままでは、今後も同じような惨事が繰り返されるのは間違いない。

和解への道筋見えず

 50日に及んだ戦闘でハマス側は2100人、イスラエル側では70人が死亡した。国連開発計画(UNDP)によると、1カ月前の8月3日時点の調査で破壊された民家は1万600棟を超えており、インフラへの被害は甚大だ。復興には40億から60億㌦が必要とみられている。ガザ地区唯一の発電所も破壊され、復興にかなりの時間がかかるのは避けられない。

 これだけの大きな被害を出した戦闘だが、両者の和解への道筋は全く見えてこない。ハマスは、停戦の条件として第一に、イスラエル、エジプトとの間の検問所の開放を要求した。人、モノの出入りはイスラエルによって厳しく管理されてきたが、封鎖が強化されたのは07年にハマスがガザ地区の実効支配を始めてからのことだ。

 「イスラエルの破壊」を掲げるハマスが、破壊力の大きい兵器を手に入れることはイスラエルにとってはまさに悪夢だ。ハマスの兵器は性能を高めており、今回の衝突では、ロケット弾がエルサレムにまで到達するほど射程が延びていた。

 さらに、ガザとイスラエルの境界には、コンクリートで補強された地下トンネル網が張り巡らされていた。イスラエルに侵入するためのもので、イスラエル軍が危険なガザ侵攻をあえて行ったのは、このトンネル網の破壊のためだった。

 ハマスは国際社会からの攻撃停止要請を拒否してきた。ハマスにはイランが援助しているとされている。イスラム教シーア派大国のイランがスンニ派組織のハマスを支援するのは、イスラエル殲滅のためだ。だが、イラン経済は核開発疑惑をめぐる制裁で疲弊しており、支援は減少していたとみられている。

 ハマスがイスラエル破壊の看板を下ろせば、国外の反イスラエル勢力からの支援が途絶える。生き残るにはイスラエルへの攻撃を続けるしかない。

 ハマスは停戦合意を受け、勝利を宣言したものの、封鎖の一部解除の約束を得ただけで、その他の懸案は事実上の棚上げとなっている。イスラエルも「大きな打撃を受け、要求したものをハマスは何も得なかった」(ネタニヤフ首相)と戦闘の成果を強調するものの、一時的な平穏が訪れたにすぎない。

 ハマスは停戦を受け、すでに武器調達を開始したと報じられている。不毛な戦いが今後も続くのは間違いない。

 中東和平交渉の再開を

 現在ヨルダン川西岸を支配するパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハは、イスラエルとの和平交渉に応じる姿勢を見せたことがあるが、現在交渉は止まったままだ。イスラエルは、ファタハとの交渉再開をまず目指すべきだろう。ファタハの勢力拡大へ国際社会の支援も不可欠だ。ハマスが武力によるガザ支配を続ける限り、パレスチナの恒久的和平は望めない。

(9月3日付社説)