許されないロシアのウクライナ侵略
ウクライナ東部では現在、同国からの分離独立を求める親露派武装勢力と政府軍の衝突が続いているが、ロシア軍が侵入して同勢力への支援に乗り出した。内政干渉を狙った侵略であり、日本をも含め国際社会にとって見過ごすことはできない暴挙だ。プーチン露政権を一致して弾劾し、ロシア軍を撤退させなければならない。
東部の「国家機構」に言及
侵入の意図がウクライナ東部の分割ならびに独立であることは、プーチン大統領の言明でも明らかだ。同大統領は東部に「国家機構」を設けることを検討する必要があるとの考えを表明した。現在、親露派が拠点としている東部のドネツク、ルガンスク両州に、事実上の独立国に近い地位を与えようという魂胆だとみてよい。
同様な形でロシアが独立させた「国家」に、アブハジアと南オセチアがある。両「国家」はグルジア国内で国際社会からの承認を受けないまま、ロシアの支援を受けて独立を宣言した。
プーチン大統領はウクライナについて「人々が銃を突きつけられ殺されている状況を、ロシアは放置できない」とした上で「しかるべき措置が必要だ」と主張した。だが、これはロシア軍の侵入を取り繕うための口実で、親露派による自治領域の確保が目的であることは明らかだ。
西側世界の反応がロシアに対して厳しいのは当然だ。欧州連合(EU)はブリュッセルで開いた臨時首脳会議で、対露追加制裁の具体案を1週間以内に準備することを決めた。米政府は英国で開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で追加制裁を協議する考えを示している。ロシア軍の侵入を「侵略」と見なし、早急に軍を撤退させるよう圧力を掛けることを狙ったものであり、支持したい。
ウクライナへの侵入は、プーチン政権の国際信用を一挙に失墜させるものだ。これまで同政権は軍の投入はおろか親露派への武器供与すら否定してきた。戦闘で多数のロシア軍兵士が死亡しているとの情報もあり、兵士の親族からの問い合わせが殺到しているという。国民に「隠された戦争」がプーチン政権の足を引っ張る可能性もあろう。
政府軍と親露派武装勢力の戦いはロシア軍侵入で複雑化し、長期化する可能性が出てきた。欧米諸国も政府軍支援を強化させることは必至で、一進一退の攻防戦が続くことになろう。
憂慮されるのは一般市民の被害だ。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の発表によると、ウクライナ東部の戦闘による4月中旬以降の死者は先月27日の時点で少なくとも2593人に上った。過去1カ月で少なくとも1日平均36人が死亡したという。由々しい事態だ。
OHCHRは戦闘激化で避難を余儀なくされた一般市民が、政府軍による攻撃の標的になっていると報告している。政府軍、親露派による人権侵害に厳しい監視の目を向ける必要がある。一般市民を標的にする攻撃は国際人道法に違反するものだ。
紛争終結へ仲介の努力を
今ロシアに求められるのは、戦闘を長期化させるような軍事介入中止と、紛争の早急な終結のための仲介の努力である。
(8月2日付社説)