国会は建設的で創造的な論戦を


 会期が12月6日までの臨時国会が開幕した。先の参院選で与党が圧勝し、衆参両院で多数派の異なる「ねじれ」解消後、初の国会となる。政府・与党が強硬策をとれば重要法案を次々と成立させられる環境になったと言えるが、あくまでも国益を中心とした与野党の建設的な論戦を土台とすべきだ。

 安倍晋三首相が政権に返り咲いた際に強調していた「丁寧な国会運営」を心掛けるという初心に返るべきである。

物足りない改憲発言

 安倍首相は所信表明演説で、自身の経済政策アベノミクスにより「世の中の空気を一変させた」と自信を示した。その上で、「成長戦略実行国会」と銘打った今国会でデフレ脱却に向けて迷わずに「この道」を進んで行こうと呼び掛けた。

 確かに主要な経済指標では好転が裏打ちされている。首相の主導する企業の競争力強化のための産業競争力強化法案や地域の雇用などの規制を緩和する国家戦略特区関連法案は成長戦略の柱であり、早急な成立が望まれるが、既得権益にどこまで切り込めるのか。しがらみを超えて前進させる首相の指導力が問われるところだ。

 外交・安全保障面でも今国会は重要法案を抱えている。国家安全保障会議(日本版NSC)創設法案や特定秘密保護法案の成立は肝要である。

 演説で注目したいのは、首相がわが国の安全を確保していくために「国家安全保障戦略」を策定する考えを明らかにしたことだ。これはわが国にとって外交と安保をセットにした初の体系的かつ長期的な戦略である。首相の言う「積極的平和主義」の理念を具体化させるものとして意義がある。

 ただ首相は集団的自衛権の行使容認に関しては触れず、憲法改正についても結びの部分で少し言及した程度だ。「国民的な議論をさらに深めながら、今こそ前に進んで行こう」とは語っても、「首相らしさ」はうかがえない。改憲のための「国民投票の手続きを整え」ると述べた程度では物足りない。改憲がなぜ必要かを自ら強く訴え続けることが前進へのカギだ。

 一方、野党側は政府・与党に対峙するための共闘体制づくりに時間を費やし、国益・国民益を追求する論戦を怠ってはならない。

 国会開幕の前倒しを求めてきた野党は、東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題で首相を追及しようと手ぐすねを引いて構えている。だが最大の問題は、どうすれば解決策を見いだせるかのはずだ。原発の問題は、オールジャパンで対処しなければならない。言葉尻をとらえて政権を攻め立て得点稼ぎをしようとするのでなく、英知を結集して皆で解決を図る姿勢が求められる。

与野党協力が不可欠

 今国会は、他にも社会保障改革、環太平洋連携協定(TPP)交渉、教育再生、国会改革など重要案件が目白押しだ。実質的な審議日数は1カ月半程度しかないため、与党側の丁寧な運営と野党側の迅速な審議への協力が不可欠である。きょうから代表質問に入るが、建設的かつ創造的な論戦を期待したい。

(10月16日付社説)