滋賀県知事選、慢心戒め丁寧な政権運営を


 滋賀県知事選は、無所属新人で元民主党衆院議員の三日月大造氏が、自民、公明両党が推薦する元経済産業省官僚の小鑓隆史氏ら無所属2新人を破り、初の当選を果たした。

 告示前は小鑓氏が大幅にリードしていたとされるが、閣僚の失言や東京都議会での自民党議員によるセクハラ野次問題などが響いた。巨大与党は慢心を戒める必要がある。

 失言や野次で与党敗北

 東京電力福島第1原発事故による汚染土の中間貯蔵施設に関する石原伸晃環境相の「金目」発言は、その真意はともかく、不適切な表現であったことは確かだ。

 都議会での女性議員に対する「早く結婚した方がいい」という野次も、有権者に巨大与党の驕りと受け止められたのだろう。与党には何よりも謙虚な姿勢が求められる。

 一方、当選した三日月氏は現職の嘉田由紀子知事に後継指名され、計画的に原発をなくす「卒原発」を掲げた。滋賀県は全国最多の14基の原発を抱える福井県と隣接している。

 政府は4月に閣議決定したエネルギー基本計画で、原子力規制委員会の安全審査に合格した原発を再稼働させることを明記している。再稼働には地元の理解と協力が不可欠だ。

 三日月氏は衆院議員の時に、原発輸出協定に賛成した。国のエネルギー政策に関し、現実的な対応を求めたい。もちろん、政府が地元の不安の声にも十分に耳を傾けた上で、原発の安全性と再稼働の必要性について丁寧に説明しなければならないのは当然だ。

 知事選は、安倍政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定した直後に行われた。安倍晋三首相は知事選の敗因について「集団的自衛権の議論が影響していないと言うつもりは毛頭ない」と国会で答弁した。

 中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などで、日本の安全保障環境は悪化している。集団的自衛権の行使を可能にし、抑止力の向上を図ることは正しい。

 しかし、国民の理解が十分ではないことを今回の選挙結果は反映している。政府には支持を得られるように情報を発信していく必要がある。

 また、行使容認に慎重な公明党との選挙協力にも支障が生じたとの見方もある。集団的自衛権に関しては、行使範囲を広げたい自民党と、できる限り狭めたい公明党の考えに隔たりがある。これを埋めていく作業も欠かせない。

 三日月氏は今回、民主党を離党して選挙に臨んだ。三日月氏の勝利が民主党への支持につながるかは不透明だ。民主党は集団的自衛権の行使容認について党内で賛否が割れており、党としての見解を早急にまとめなければならない。

 国民の理解得る努力を

 今年秋には福島、沖縄両県知事選、来春には統一地方選が行われる。福島は原発、沖縄では安保が焦点となろう。

 しかし、エネルギーや安保は地方にとどまらず、国家全体にとって極めて重要な問題だ。安倍首相は丁寧な政権運営で国民の支持を広げる必要がある。

(7月16日付社説)