川内原発の速やかな再稼働を実現せよ


 原子力規制委員会は九州電力川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)の安全対策が新規制基準に「適合している」とする審査書案を発表した。同発電所は、再稼働の前提条件である安全審査に事実上合格したことになる。全国の原発で初めてだが、今後、地元の同意や起動前の使用前検査などの過程を経なければならない。速やかな再稼働を求めたい。

15㍍の津波にも対処

 九電は昨年7月の新基準施行当日に審査を申請。規制委は今年3月から優先的に作業を進めてきた。当初、早ければ申請から半年程度で終わるとの見方もあったが、規制委側が「安全性の証明については事業者の責任もある」などと注文。解析のやり直しや、想定される地震の揺れ(基準地震動)の見直しをたびたび規制委に求められ長期化した。

 九電は未知の活断層による地震の揺れを以前より大きく想定。津波対策では高さ15㍍の波でも耐えられるようにし、これらが評価された。

 今後、九電が事故時の人員配置などを決める審査手続きのために8月に必要書類を提出するのを受け、規制委は現地で機器を検査する。川内原発の地元では反対は少なく、自治体の同意は得られる見通しだ。

 現在、各電力会社が規制委に安全審査を申請しているのは全国の12原発19基。審査の迅速化を進めたいが、難航も予想される。その原因の一つには、委員らの行政官としての自覚不足があるとみられる。規制委は、旧原子力安全委員会などのように省庁が設置したものとは違い、環境省の外局として置かれ、予算や人事面で独立している。確かに政府や省庁からの影響を受けにくい。

 しかし規制委員は行政官であり、原子力施設に関する安全規制は原子力基本法の枠組みの下で行う必要がある。つまり国のエネルギー政策について熟慮し、原子力利用に関わる電力の安定供給、エネルギー安全保障などとのバランスを取った、スムーズな審査であるべきだ。例えば敦賀原発の場合、12万年前以降に活動していない断層の存在を取り上げて、審査の議論の俎上に載せることが必要なのか、疑問に思う。

 一方、規制委とともに原子力行政を進める車の両輪である原子力委員会にも問題がある。この1年間の両者を見ていると、規制委の主張や活動は非常に目立つ半面、原子力委の主張が伝わってこない。

 同委には原子力の必要性と安全性について世論をリードする積極的な取り組みが求められるが、依然、役所然として社会に向かっての一方的な発言が多い。反省すべきだ。

原発担う地元は誇り

 他方、再稼働を果たすためには地元の住民、自治体の同意が必要だ。川内原発では比較的容易にクリアが見込まれるが、他の原発では難航が予想されるところが多い。これには地元の意識転換とそのための啓蒙が必要だ。今や原発はなくてはならないエネルギー供給源であり、それを担っているという自覚と誇りを持つ転機として再稼働を受け入れたい。

(7月17日付社説)