緊急事態延長、減少確かにし収束へ道筋を


 政府は新型コロナウイルス対策で11都府県に7日まで発令中の緊急事態宣言を、栃木県を除く10都府県で3月7日まで1カ月間延長することを決めた。

 緊急事態宣言後、感染は減少傾向にある。この延長で減少を確かなものとし、ワクチン接種による収束への道筋を整えていきたい。

 医療体制逼迫の10都府県

 菅義偉首相は延長の理由について「感染の減少傾向を確かなものにしなければならないと判断した」と述べた。延長する10都府県においては、医療提供体制の余裕のなさが依然深刻なことがもう一つの大きな理由だ。

 病床の逼迫(ひっぱく)状況を示す「確保想定病床使用率」は1月31日時点で、栃木と京都を除く9都府県がステージ4(50%)を超え、東京は72%となっている。重症化リスクの高い高齢者の感染拡大が要因とみられる。感染者は減少傾向にあるが、医療提供体制の逼迫が続いているのだ。

 昨年暮れからの感染第3波は1月7日から10日前後がピークで、その後減少傾向にある。1月7日からの緊急事態宣言発令による飲食店の時短営業などで会食や夜間の繁華街への外出機会を減らし、一定の効果を挙げることができた。しかし、解除による緩みで再び増加へ転じさせては、これまでの努力も無駄になりかねない。ここは、国民がこの時期の重要さの認識を共有して一致協力する時だ。

 継続していく対策の主なものは、不要不急の外出自粛要請、飲食店に対する午後8時までの営業時間短縮要請、テレワークによる「出勤者7割減」など。イベントは上限5000人かつ50%以下という収容人数制限も維持する。

 追加対策としては、病床を確保し、回復した感染者の転院支援の仕組みの検討、高齢者施設の職員らに3月までをめどに集中的に検査を実施することなどがある。

 日本の医療環境は人口に対するベッド数を見た場合、決して少なくない。柔軟な対応と工夫によって医療リソースを生かし、医療提供体制の逼迫を改善することは急務の課題だ。

 菅首相は「状況が改善された都府県は期限を待たず順次、宣言を解除していく」とも表明した。その条件として、病床の逼迫状況の改善、そして新規感染者数が東京で1日500人、大阪で1日300人を下回ることが重要との見解を示した。

 もちろん3月7日以前に、感染者数が減少し解除できることが望ましい。それだけ、経済社会活動の回復は早まる。一方、解除した途端にまた増加傾向に転じるという恐れも十分に考えられる。気温の上昇、ワクチン接種の開始とその後の進み具合などを勘案しながら専門家の意見を基に判断していかなければならないだろう。

 雇用維持への支援を

 宣言の延長は当然、経済社会活動への影響が避けられない。運輸、観光、飲食業などへの影響は特に大きい。昨年からの自粛によって体力が消耗し事業存続の危機に直面する企業も少なくない。政府や自治体は、資金支援だけでなく、経営と雇用維持のため、さまざまなサポートを行うべきである。