年金制度改正、支え手増やし持続可能に


 政府が年金制度改正法案を閣議決定した。改正の狙いは「全世代型社会保障」を実現するため、女性や元気な高齢者に制度の「支え手」に回ってもらうというものだ。

 少子高齢化に対応し、年金制度を持続可能なものとしていく必要がある。

 高齢者の就労拡大図る

 改正法案は高齢者の就労拡大に向け、60~70歳の間で選べる受給開始時期を60~75歳に拡大することを盛り込んだ。繰り下げた期間に応じて月々の年金額が上乗せされる。現在は原則65歳で受給が始まるが、開始時期を1カ月遅らせるごとに年金月額が0・7%ずつ増え、75歳で受け取り始めれば65歳開始時の1・84倍になる。

 さらに、一定以上の収入があるシニアの厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」も見直される。60~64歳の減額基準となる賃金と年金の合計額を2022年度に月28万円超から月47万円超へ引き上げる。

 政府が18年2月に決定した高齢社会対策大綱では、65歳以上を一律に高齢者と見なしてきた立場からの脱却を宣言し、意欲ある人には年齢にかかわりなく働いてもらう「エイジレス(年齢にこだわらない)社会」を打ち出した。

 現代の高齢者は以前と比べ、加齢に伴う衰えが5~10年遅いとの指摘もある。働く意欲と能力のある高齢者の労働参加を促し、年金をはじめとする社会保障制度を支えてもらうことは、少子高齢化が進む中で欠かせない。高齢者の活用は人手不足への対処にもつながる。

 70歳までの就業確保に努めるよう求める高年齢者雇用安定法などの改正案が今通常国会で成立すれば、21年4月から施行される。高齢者が働きやすい環境づくりはもちろん重要だ。ただ70歳雇用で企業の人件費が上昇すれば、現役世代にしわ寄せが及ぶ恐れもある。

 また、いくら現代の高齢者に「若返り」が見られるといっても、高齢になれば健康や体力の面で個人差が広がることは避けられず、就業形態や労働時間に関する要望も多岐にわたるのは当然のことだ。政府は企業に高齢者の雇用拡大を要請するのであれば、相談体制の整備や補助金の交付などさまざまな支援を行うことが求められる。

 改正案では、兼業・副業などで複数の職を持つ人が労災に遭った場合の給付制度を拡充。実際の収入額に応じた給付が受けられるようにするほか、過労死や精神障害の労災認定では、複数の職場の労働時間や負荷を総合的に判断し、適用されやすくする。もっとも高齢者が労災に遭わないためには、仕事内容に関して企業側の配慮が大切だ。

 中小企業への目配りを

 このほか年金制度改正案は、パートなど短時間労働者への厚生年金適用拡大に向け、加入義務がある企業の規模を、現行の従業員501人以上から22年10月に101人以上、24年10月に51人以上へと引き下げることを盛り込んだ。これで、新たに65万人が厚生年金に加入することになる。ただ、保険料の半分は企業が負担するため、特に中小企業には大きい。十分な目配りが求められる。