国連機関 中国の影響力拡大食い止めよ


 国際連合の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)は、次期事務局長の選挙を実施し、米国や多くの西側諸国が推すシンガポールの特許庁長官ダレン・タン氏が、中国の王彬穎WIPO事務次長との一騎打ちを制した。

四つでトップを務める

 WIPOは15ある国連専門機関の一つで、知的財産の保護についての国際的なルールづくりや、特許の運用を担う。今回の選挙は最終的に中国、コロンビア、ガーナ、シンガポールなど6カ国が候補者を擁立。日本はWIPOの夏目健一郎・上級部長を候補者に立てたが、2月に取り下げた。

 王氏は当初、アフリカ諸国などから支持を集め有力候補とみられていたが、米政府当局者らは「中国は知的財産を保護してこなかった、盗用している」と批判を強め、加盟各国に協力を要請。日米欧などがタン氏を推していた。

 トランプ米政権の国連への働き掛けは決してアクティブではない。しかし、この件に関してはポンぺオ国務長官が「WIPOだけは中国がトップに行ってはいけない」と積極的な発言を行った。

 昨年8月、屈冬玉氏が国連食糧農業機関(FAO)の第9代事務局長に就任し、国連専門機関のトップを務める中国人が4人に増えた。その地位を自国のために利用しているとの批判も浴びていた。

 中国は五つ目のポストを狙っていた。中国人がWIPOのトップになれば、知的財産をめぐる機微な情報がそのまま中国政府に流れる恐れがあった。

 いずれにせよ、中国人が国連専門機関のトップの座を占める勢いはこれからも続く可能性が高い。中国の海洋進出や巨大経済圏構想「一帯一路」における覇権主義的な動きを見れば、中国人が多くの国連機関のトップに就くことは警戒を要する事態だと言わざるを得ない。

 新型コロナウイルスの感染拡大をめぐっては、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長に、感染を広げた中国に配慮する言動が目立つ。1月には緊急事態宣言を1度見送り、その後宣言した際にも「中国政府は感染拡大阻止に並外れた措置を取った」と賛辞を繰り返した。

 中国は情報隠しや初動の遅れで全世界に感染を拡大させた。本来であれば、テドロス氏は中国を強く批判すべき立場だ。その中国に忖度(そんたく)するようでは、健康を基本的人権の一つと捉えるWHOのトップにふさわしいとは言えない。

 背景には、テドロス氏がエチオピア出身で、エチオピアへの最大投資国が中国だという事実がある。中国人がトップでない国連機関でも、中国の影響力が強まっていることは大きな懸念材料だ。

普遍的価値を擁護せよ

 来年は国連教育科学文化機関(ユネスコ)、再来年はWHOの事務局長選挙がある。国連機関で共産党一党独裁体制の中国の立場が強まれば、自由や民主主義、人権、法の支配などの普遍的価値が軽んじられる恐れがある。日米欧などは今回のように連携し、中国の影響力拡大を食い止めるべきだ。