ふるさと納税 地方創生に向け一層の改善を


 ふるさと納税の新制度から除外したのは違法として、大阪府泉佐野市が総務相に取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪高裁は「総務相に付与された裁量権の行使に逸脱、乱用はない」として市の請求を棄却した。

 泉佐野市が訴訟起こす

 総務相は2017~18年、自治体間の競争の過熱を受けて返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」とする基準を通知した。しかし、泉佐野市はインターネット通販アマゾンのギフト券を返礼品に上乗せするなどし、18年度に全国トップの497億円の寄付金を集めた。これは全国の寄付総額約5127億円の1割近くを占める。

 総務省は19年6月、改正地方税法施行に伴い基準を満たす自治体のみが参加できる新制度に移行。施行前の段階で通知に従わなかったことを問題視し、泉佐野市のほか静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4市町を除外した。

 これに対して泉佐野市は、通知は技術的助言で法的拘束力がないだけでなく「総務相は法的規制を過去にさかのぼって適用しており、裁量権の逸脱、乱用」と主張した。

 判決は、新制度は総務相に適正な基準を定める権限を付与していると指摘。通知を受けても運用を是正しなかった泉佐野市が新制度の対象とされなかったとしても「地方自治法に反しない」と結論付けた。総務相の広い裁量権を認めたものだ。

 総務省の決定が支持されたため、泉佐野市がふるさと納税制度に参加できない状況は続く見通しだ。千代松大耕市長は「受け入れ難い判決。最高裁の判断を仰ぎたい」と述べた。

 今回は国の勝訴となったが、国の第三者機関「国地方係争処理委員会」は昨年9月、泉佐野市除外の判断を再検討するよう総務相に求めた。「法の不遡及」の原則を重視したもので、国の対応の遅れが自治体の反発を招いたことは否めない。

 もちろん、制度の趣旨をゆがめるような泉佐野市の高額な返礼品も問題である。他の自治体への影響も大きい。判決が、市の返礼品を「突出して極端」と批判したのは当然だ。

 ふるさと納税は自分の故郷や応援したい自治体への寄付であり、本来であれば返礼品は不要である。寄付をすれば、金額に応じて居住地に納める住民税や所得税の控除を受けられる恩恵もある。自治体だけでなく、寄付をする側も制度の原点に立ち返る必要がある。

 返礼品競争が過熱した背景には、多くの自治体が厳しい財政事情を抱えていることがある。一方、ふるさと納税の広がりで大都市部の自治体の税収が大幅に減少する問題も生じている。地方創生を目指す上で一層の制度改善が求められよう。

 寄付者との関係強めたい

 もっとも、地場産品などの返礼品は自治体のPRともなる。最近では、ものづくりや乗馬など「体験型」の返礼品も増えている。

 こうした形で寄付者との関係を強めれば、地域の活性化につなげることもできよう。特色を生かした返礼品で地域の魅力を発信できるよう各自治体は知恵を絞ってほしい。