北方領土の日 4島一括返還に強い決意示せ


 40回目の「北方領土の日」を迎えた。第2次大戦末期に旧ソ連は、当時有効だった日ソ中立条約を破棄して一方的に宣戦布告し、火事場泥棒のように択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島を奪った。戦後75年になる現在まで領土は返ってきていない。安倍晋三首相はきょう開催の北方領土返還要求全国大会でロシアに改めて抗議するとともに、4島一括返還に向けた強い決意を明確にすべきだ。

 元島民の高齢化進む

 北方領土を旧ソ連に奪われてから75年。あまりにも長い歳月である。かつて北方四島には1万7000人の日本人が平和に暮らしていたが、ソ連軍の侵攻により島民は強制的に故郷を追われた。元島民の高齢化は進み、故郷に戻りたいという願いを果たせないまま亡くなる人々は増える一方だ。

 既に敗色が濃厚だった第2次大戦末期の日本から、あまつさえ北海道も奪おうとたくらんだ旧ソ連は宣戦布告後、大軍を送り込んできた。日本がポツダム宣言を受諾した1945年8月14日以降も侵攻を続け、日本が降伏文書に調印した9月2日を過ぎてもやめなかった。

 それだけではない。ソ連は旧日本軍人や民間人ら約60万人を国際法に違反してシベリアに抑留し、飢餓や酷寒の中での過酷な強制労働に従事させ約6万人を死に至らしめた。これらの事実は、どう言い繕っても正当化できるものではない。

 首相はロシアのプーチン大統領と会談を重ね、北方四島の「共同経済活動」提案を切り口にロシアを領土交渉のテーブルに着かせた。しかし、これまでの交渉で繰り返されたように、領土が返ってこないまま経済協力だけが進む事態は避けなければならない。領土問題に進展がなければ、共同経済活動実現に向けた作業の打ち切りも検討する必要がある。

 当初「領土問題は存在しない」としていたプーチン氏も、歯舞、色丹の2島引き渡しを明記した56年の日ソ共同宣言を交渉の基礎とすることで同意した。だが、択捉、国後両島も日本の領土である。首相はあくまでも4島返還を目指すべきだ。

 懸念されるのは、北方領土問題に関して首相の姿勢が後退していることだ。昨年の返還要求全国大会では、大会アピールに例年使う「北方四島が不法に占拠され」の表現が盛り込まれなかった。首相のあいさつでも「わが国固有の領土」という従来の文言がなかった。ロシアとの交渉に向けた配慮だろうが、かえって誤ったメッセージを送ることにならないか。

 ロシアは南クリル諸島(北方領土)の軍事拠点化を推し進めている。開発予算も拡大してインフラを整備し、北方領土の「ロシア化」を加速させている。日本としては容認できない事態である。

 首相は足元を見られるな

 首相はプーチン氏からの招待を受け、ロシアでの対独戦勝75年式典に合わせ、5月に訪露する方向で検討に入った。日露首脳会談を実施し、停滞している北方領土交渉の進展を図る狙いがある。4島返還実現に向け、足元を見られることがないよう交渉を進めてほしい。