各党代表質問 野党は国難対処で存在感示せ
安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が始まり、衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男代表、自民党の二階俊博幹事長、国民民主党の玉木雄一郎代表が質問に立った。首相主催の「桜を見る会」をめぐる情報開示、カジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐる汚職事件など政権追及を優先する構えを野党側が改めて示したが、出生率低下、経済、外交・安保、憲法改正など重要な議論の成熟を期待したい。
出生率低下を問題視
今年の国会論戦の火ぶたが切られたが、枝野氏は「桜を見る会」を、玉木氏はIR汚職事件を質問の冒頭に挙げて安倍政権の責任を追及し、枝野氏は首相に辞任まで迫った。
言論の自由が保障された国会であり、野党が政権を批判するのは自然なことだ。しかし、口先の軽さは否めない。首相に退陣を求めれば解散総選挙となることも考えられる。衆院選に備え、両党首は昨年末に合流協議を開始したものの、話し合いは不調となり、見送りとなった。
反自民の各党が異口同音に「桜を見る会」やIRへの批判を展開して疑惑化を図り、野党寄りのマスコミと共に政治不信を高めようとしている。これまでも繰り返された一強多弱の国会が、早くも展開されようとしている。
無論、野党側の政権批判は政府・与党を刷新する効用があり、今年の「桜を見る会」の中止などに表れた。ただ首相はIR問題や閣僚辞任問題でも答弁で無難にかわしており、野党の追及も手詰まり感がある。
森友・加計問題、勤労統計不正調査問題なども同様で、内閣支持率は一時下がるが野党の支持率も低いまま上がらない傾向が続いている。むしろ、野党は難問に焦点を当て、代案を提示しながら政権担当能力を示していくべきだ。
この点、両野党の代表が質問で出生率の低下を問題視したのは重要だ。玉木氏は、86万4000人に減ったわが国の出生数について「50年間で100万人減った」として「国難」と位置付け、「婚姻数や婚姻率を上げることが重要」と述べた。
ただ、婚姻数を増やすために選択的夫婦別姓の導入を主張したことは疑問だ。夫婦別姓は家族の絆を弱め、少子化対策になるとは思えない。首相は、結婚を希望する男女に地方自治体が出会いの場を提供する取り組みを後押ししていくとした。
また、枝野氏は少子高齢化問題への対策に関して「社会全体で『支え合う安心』の仕組みを構築しよう」と党の政権ビジョンを提示した。自民党政権が進めた民営化による「小さな政府」に異を唱えて対抗軸を示したものだ。日本の人口を増やすための政策論議は歓迎したい。
憲法審で活発な議論を
二階氏は昨年、猛威を振るった台風など自然災害への対策として「国土強靭(きょうじん)化」の推進を掲げた。世界的に自然災害の大規模化の傾向が強まり、これもわが国が取り組む重要課題だ。また、憲法改正について首相は、自民党案はたたき台であり、野党にも案の提出を求めた。与野党で憲法審査会での議論を活発に行っていくべきだ。