秋元議員逮捕 カジノの健全性に向け猛省を
統合型リゾート(IR)事業の開業を前に、中国のカジノ関連会社から賄賂を受領した疑いで、IR担当の内閣府副大臣を務めるなどIR事業を推進してきた衆院議員の秋元司容疑者が東京地検特捜部に逮捕された。射幸性の高いカジノを健全な娯楽として運営するため「世界最高基準の規制」を政府・与党は唱えており、猛省して襟を正さなければ開業は危ぶまれると言わざるを得ない。
出鼻くじかれたIR事業
将来、2兆円産業と見積もられるカジノの解禁をめぐって論争となったIR実施法が昨年制定され、安倍政権では2020年東京五輪後の経済を牽引(けんいん)する起爆剤として位置付け、開業の準備を進めていた。巨額のIRマネーが動く事業運営には健全性が特に求められていたところへ、出鼻をくじかれる事態だ。
秋元容疑者は収賄を否定しており、真相は今後の捜査を見なければならない。しかし、大きなビジネスチャンスに海外のカジノ関連会社がわが国への進出に強い関心を持ち、政府・与党関係者への働き掛けも活発化していることが悪い形で表面化したと言えよう。官民関係における商慣習などわが国との乖離(かいり)は想像に難くない。
贈賄容疑で社員らに逮捕者を出した中国のカジノ関連企業「500ドットコム」は、税関への届け出をしないまま数百万円を不正に国内に持ち込んだ外為法違反事件を起こしており、進出に向けた工作資金にしていたとみられる。これが、国会議員の汚職事件につながることは極めて遺憾なことだ。
IR開業は米ラスベガスやシンガポールの豪華な施設に倣い、増加する外国人観光客のさらなる誘致に加え、雇用や税収の増加、事業者が収益を地域に還元する公益など多くのメリットが指摘される。一方、ギャンブル依存症、日本で歴史的に禁止されてきた賭博、マネーロンダリングや反社会集団との関わりなど負のイメージもあり、懸念も寄せられていた。
このため政府はIR推進会議で「世界最高基準の規制」を掲げ、来年1月にカジノ事業の許認可などを行う監督機関のカジノ管理委員会を発足させる方針で、元高検検事長ら5人の人選をしていた。また初めてのカジノ解禁に当たり、IRは全国で3カ所、カジノは一つのIRに一つに限定し、事業者にとっては狭き門となっている。
逆に見れば、今回のように巨額の収益を見込む事業者が手段を選ばない進出攻勢を掛けてくることが予想され、わが国は未経験のギャンブル市場の競争に直面することになる。当局者は相当の緊張感を持ってカジノの健全運営に尽くしていく必要がある。
また、秋元容疑者は自民党を離党したが、来年通常国会では野党は冒頭からIR問題を追及する構えであり、IR誘致に名乗りを上げている大阪府、横浜市、和歌山県、長崎県でも賛否をめぐる争点となることは避けられない。
マイナス予防へ議論を
与野党で徹底的な議論を通じて、カジノの持つマイナス面を予防し、安全な一大リゾートを実現させてほしい。