日本財団が母乳バンク開設
4月から提供開始 国内最大規模
毎年5000人を超える新生児が、28週未満で生まれる超早産児や1500㌘未満の極低出生体重児として生まれる。「日本財団母乳バンク」は、こうした新生児に人工ミルクではなく、ドナー(提供者)から集めた「母乳」をNICU(新生児集中治療室)に提供するサービスを今年4月から開始する。それに先立ち、16日、メディア発表会が日本橋小網町スクエアビル(東京都中央区)で行われた。
同財団の笹川陽平会長はあいさつで「子供たちの世界が荒れている」と話し、こども家庭庁に触れ「われわれは『こども基本法案』の制定も求める論陣だ」と主張した。また、母乳バンクが開設に至った経緯を説明し、「日本人が持つ助け合いの精神でドナーになってほしい」とドナー登録の協力を仰いだ。
同バンクの水野克巳理事長は「産みの母親の母乳が出るのを長時間待つことは、超早産児に悪い影響がある」とし、「経腸栄養の確立(母乳の投与)が早い方が、3歳時点での脳性麻痺(まひ)、視覚・聴覚障害、在宅酸素、認知機能障害の割合が低くなる」という研究結果を示し「母乳バンクの必要性」を解説した。
また、母乳バンクの仕組みを紹介した田中麻里・同バンク常務理事は「同バンクは日本で2カ所目の施設であり、将来的にはオーダーメイドのドナーミルクを提供できる世界初の研究体制を目指す」を語った。
実際に母乳バンクを利用した2人からビデオメッセージが寄せられた。母乳の提供を受けたレシピエントの親・池田望実さんは「すぐに母乳を与えられなかった辛(つら)さがあったが、母乳の提供によって産後の身体回復に専念できた。子供も3カ月後に退院し、順調に育っている」と感謝の意を表した。また、ドナーとして母乳を寄付したことのある古田南さんは「搾乳は大変なことではあるが、子育てのみで閉塞(へいそく)感があった私でも、困った親子を助けることができる。社会とのつながりを感じることができた」と振り返った。
根本匠衆院議員・衆議院予算委員長も出席し、「現在、政策テーマで取り上げてこなかったことに問題がある」と指摘し、「厚生労働科学研究で取り組みを続ける」と意気込みを語った。このほか、同ビル1階に新設された研究施設などの内覧が行われた。現在のドナーは約260人で、日本全国に行き渡らせるためには約2900人の登録が必要だという。