米の若者移住勧め地方創生を
エルドリッヂ研究所代表・政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ
人口減少・空き家対策に
技術革新と国際協力も促進
昨年10月22日の総選挙後、世界日報に、続投の安倍晋三政権に対する提言を求められ、26日付で掲載された。多くの読者は私の専門分野である外交、安全保障や防災に言及することを期待しただろうが、提言では個人的な心配である「少子化と地方創生」について論じた。実は私は今、互いに深く関係しているこの二つの問題に最も強い関心を持ち、その対応に最も時間を費やしている。その理由は明瞭だ。
「超高齢社会」となっている日本は、早急に出生率を上げないと、近い将来、財政的な破綻に直面する。その危機は日本のみならず、近隣諸国、友好国、同盟国に多大な影響を与える。そして、極度に人口減少した日本では、経済や国家そのものを担う人材が不足し、経済、安全保障、外交、医療、教育、文化、芸術、スポーツのあらゆる分野で、戦後一貫して果たしてきた役割を果たせなくなる。要するに、国内的に弱体化した日本は、世界の役に立てなくなる。
人口減少と超高齢化社会は、第2の問題と関連している。地方の小規模な町村の活力が失われ、消滅しようとしている。少子化問題や、強烈な磁石のように人を引き付ける東京などの大都市への移住によってほとんどの町は毎年、人口の1~2%を失っている。この現象が最もよく表れているのは空き家や放棄された土地だ。昨年、注目されたある報告書によれば、2031年までに日本の家の3分の1は空き家になる。
さらに、長期間空き家になっているほど、改装の経費がかさみ、維持費もかかる。これらの家や土地を活用できる機会は限られており、地域の活性化の政策や計画、具体的には空き家をどのように処理するかの問題に早く対応すべきだ。現在、日本の土地の11%は所有者不明で、台湾ほどの面積に相当する。この所有者不明の資産に関連する政府の支出は年間520億円。これは防衛費より多い。もっと有効な使い方があるはずだ。
幸い、ここで紹介した二つの問題は相互に関連している。普通なら、この深刻な状況を説明するのに「幸い」は適切ではない。しかし、公共政策に関しては、複数の問題が互いに関連している方が総合的な解決が可能になることが実に多い。
この相乗効果は、ここで紹介する筆者の提案に見ることができ、日米など各国に影響を及ぼす問題に同時に対処することが可能になる。すなわち、日本政府が地方自治体と連携して、米国などの外国から、若い世代の人々、子供の有無に関係なく、既婚、未婚にかかわらず日本に移り住んで働いてもらうことを政府に提言したい。
彼らは地方で空き家を借りたり買ったりできる。職探し、住まい探しをはじめ、子供の転校手続きや国民健康保険および年金加入の手続きの支援を受けられる。必要に応じて日本語教育を受け、子供たちは言語面や宿題で支援を受けることで、教育環境の移行もスムーズになる。実験的に、まず米国民限定で始めてみてはどうだろうか。米国と日本の間には所得税条約などさまざまな二国間協定があるからだ。
米国人として、わが同胞の移住には大変興味がある。米国の若者世代、それより上の年齢層の状況は深刻である。住宅ローンや家賃すら払えない米国人は多い。低賃金で働き、健康保険に入ることもできずにいる。奨学金の返済などさまざまな経済的困難に直面している。才能があり、教養もあり、テクノロジーに通じているにもかかわらず、強欲な企業は、利用するだけ利用して、親の世代が受けたような恩恵を与えようとしない。
日本には熱心に働き、より良い生活を望む才能のある人々が必要だ。私たち米国人はこれまで、誰でも努力すれば願いがかなう「アメリカン・ドリーム」を語ってきた。だが、今ではそう簡単でない。日本の経営者、共同体、社会、政府がこの「移住するプログラム」にしっかり関与すれば「ジャパニーズ・ドリーム」を語れない理由はない。
政府はただちに、中小企業および大企業、厚生労働省などの官僚、都道府県および地方自治体首長、地方自治専門家で構成される委員会を組織すべきだ。この提案を実行するために、現行法が不十分であれば国会で新法案を通過させればいい。予算は前述の520億円から捻出すればいい。移住の計画が進めば進むほど、空き家や放棄された土地が少なくなるからだ。
こうした人々は、技能・才能面で地域や雇用主に貢献しながら新たな職業体験や海外経験が得られる。新しい友人関係が芽生え、永住する者もいるだろう。企業ではイノベーション革命が起こり、日本経済の発展を牽引(けんいん)するだろう。このような人道的措置は難しいものではなく、日本の社会、教育、経済、外交にとっても重大な意味を持つはずであり、真剣に検討すべきだ。
17年3月に選出された直後のマクロン仏大統領の言葉を思い出してほしい。米国の科学者にフランスへの移住を呼び掛け、専門的な知識とスキルを生かしてほしいと訴えた。安倍首相も、さまざまな背景やスキルを持った米国人を日本に招き入れることができる。日本で才能を生かせば、その貢献は評価されるはずだ。