憲法9条を見直し改正せよ

竹田 五郎軍事評論家 竹田 五郎

独立国に自衛権不可欠

中露・北朝鮮の脅威が増大

 現日本国憲法は、昭和22年、連合軍占領下において、公布、施行された。前文を一読して、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とは、他国依存の非武装なのか、また「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」とは、敗戦により現実を見失い、桃源郷に夢見るのかとさえ思えた。

 その後、憲法制定の経緯を知り、5月3日を国の祝日として祝う気持ちは失せて、自宅での国旗掲揚も敬遠している。

 日本は昭和20年9月2日に降服文書に調印し、連合軍の軍事占領下に入った。同月22日、米国政府は、要旨次のような「降伏後における米国の初期対日方針」を定めた。

 1.日本が再び米国の脅威となり、または世界の平和と安全の脅威とならぬよう保証すること

 2.多国家の権利を尊重し、国連憲章の理想と原則に示された米国の目的を支持すべき、平和的かつ責任ある政府を樹立すること(以下略)

 これに基づき、翌21年2月3日、占領軍司令官マッカーサー元帥は、日本国憲法の基本原則を指示し、GHQ25名の職員に日本国憲法案の作成を命じた。1週間後、原案は完成し、日本政府に交付された。その第2項は次のように日本の非武装を明示している。

 「国権の発動たる戦争は、廃止する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、さらに自己の安全を保持する手段としての戦争をも放棄する。日本は防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。日本が陸、海、空軍を持つ機能は、将来も考えられることもない」

 現憲法第9条とこの指示との相違は、第1項に「日本は防衛と保護を、世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる」の部分を「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」と修正し、第2項に「前項の目的を達するため」を追加されただけである。

 日本政府は同草案に対して強く反対したが、容認されず、翌年5月3日、憲法は施行された。昭和25年5月、朝鮮戦争が勃発し、米国の要請により、8月、警察予備隊と称する陸上部隊が編成された。同27年海上保安庁の海上警備隊と合併し、保安隊と改称した。29年、航空自衛隊を創設し、陸、海も自衛隊と改称した。未だに歩兵は普通科、砲兵は特科、戦車は特車と呼称し、軍、兵、国防相等の軍事用語は極力排除している。

 「力なき正義は無効である」ことは常識である。独立国として、自衛権は不可欠であり、軍事力を保持することは、国連憲章でも認めている。前述のように、「対日占領後の初期方針」に基づき定めたマッカーサー元帥の指示は、当面のことに限定されたものと解釈すべきではないだろうか。占領軍の憲法改正は国際法である「陸戦の法慣例に関する条約」の第43条「国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は絶対の支障なき限り占領地の現行の法律を尊重し…」と定めているが、これに違反しないだろうか。あるいは、元帥は、将来、在日米兵力を強化し、日本防衛を担当する構想だったろうか。これでは日本が米国の保護国になり、完全な独立国とはいえない。

 戦後、日本は「吉田ドクトリン」の下に、経済重視政策により、敗戦後の驚異的復興を完成し得たが、重要な国家防衛は軽視されてきた。占領政策の影響により教育も歪み、国民は平和に狎れ、国防意欲も低下してきた。自民党は、立党以来、憲法の自主的改正を党是としてきたが、そのための努力不足か、「平和ボケ」した国民には改憲の世論は沸いてこない。最近、安倍政権による集団的自衛権行使等の安保法制検討を通じて、国民の関心は高まりつつある。しかし、社会党(現社民党)の衰退とともに、非武装中立論は色褪せたが、「9条を守る会」等が、反戦平和運動と関連しての改憲反対は激化しよう。

 世界情勢は悪化しており、アジアでは、中国、ロシアおよび北朝鮮の軍事的脅威は増加しつつある。わが国単独でこれに対抗するのは不可能で、集団的自衛、すなわち日米同盟に依存するほかはない。戦後70年間も平和であり得たのは、堅実な日米同盟と精強な自衛隊の存在、及び「幸運」によるにもかかわらず、「平和憲法」によると信じ、これを「ノーベル賞候補に」申請する運動とは正に笑止千万である。

 米国はもとより、自衛隊と共同訓練やPKOに参加した諸国の軍人等は、自衛隊が規律厳正で精強な部隊であるが、憲法解釈の制約による「一国平和主義」の似非(えせ)的軍隊と見ているであろう。一方、わが国では、安倍総理が国会で自衛隊を「わが軍」と失言し、野党や一部マスメディアに憲法軽視と批判された。

 新憲法制定後の日本防衛の実態に、殉国の英霊はさぞやご心痛のことであろう。

 政府やマスメディアは、広く国民に対し、憲法の内容や制定の経緯を説明し、さらに米国にも調整して、先ず憲法第9条第2項を除去し、自衛隊を軍に改編し、再軍備すべきであろう。

(たけだ・ごろう)