「極点社会」の回避策を急げ
高い東京の家賃、未婚率
地方創生なくば自治体消滅
日本創生会議が言い始めた新語「極点社会」は、地方が人口減と流出で消滅し、都市だけが残る社会をいうと言われている。老人の減少から介護の女性たちも都会へ流れ、当然のことながら男性とのすれ違いで、女性側からも結婚難であり、子供も育てられないといった危機感が言われている。
戦後、焦土と化した都会の人々はゼロからの出発で懸命に生き、高度経済成長の波に乗り、大半が中流家庭を満喫した。成熟社会に入って、のんびりできると思ったものの、デフレ社会で、特に若人の就職難から格差社会に至っている。
企業農地所有解禁の方向にあり、子供を育てるコミュニティーの広がりがみられると、日本の未来も明るい。さもないと、治安が悪くなることを覚悟の上で移民を受け入れなければならない選択に迫られる。
20代、30代の女性について、1980年以降、5年ごとに、地方から東京に入ってきた人と、東京から出ていった人の数の差は、2000年までは、入ってきた人よりも出ていった人の数が多かったが、2000年以降は、逆に入ってきた人のほうが多くなっている。
この10年間、地方の雇用が減少した影響で、大学に進学してそのまま東京に残ったり、20代以降に仕事を求めて新たに上京してくる女性が、それ以前に比べて多くなっている。
国は、人口移動は活発な時期と停滞する時期が繰り返されるとみている。東京への人口の出入りをもっと長い時間軸で見てみると、高度経済成長や、バブル経済の時期を山に、入ってくる人が多くなる時期とそれが収束していく時期が繰り返されていることがわかる。国の予測は、こうした動きが今後も繰り返されるという前提に立っているが、専門家は、都市へ若年女性たちの流入が続くと見ている。
即ち、介護や医療といった社会保障分野の労働力需要が、今後、地方から東京へ大きくシフトしていくことを重く見ている。
2005年から2010年の就業者数の増減を、都道府県別にみると、全産業の合計、そして医療・介護の就業者数で、全産業の就業者数が、東京と沖縄を除いて他の都道府県では減っている中で、医療や介護の就業者数は、すべての都道府県で増えており、医療や介護が、地方の雇用の最大のよりどころになっている。
高齢者の人口が減っている自治体は5分の1にのぼるが、それを上回る形で、若年者の方の人口が減り始めている。
東京から見ると、東京の家賃は7万6000円余りで、全国平均より2万円以上も高くなっており、家族向けの広い住環境を求めるのは、重い負担となっている。
子供を預けられる保育所も慢性的に不足し、待機児童は1万人を超えており、他県に比べて群を抜いて多い人数である。
こうした状況の中で、東京は女性の未婚率が42%と全国で最も高くなっており、未婚率が高く、出生率も低い現状に危機感を抱き、対策を講じようと動き始めたのが、東京・新宿区である。
新宿は、女性の未婚率が都内で最も高い53・8%で、出生率は1を下回っている。東京はこれから東京オリンピックを過ぎて、一挙に全体が高齢化していくことが予想され、後期高齢者の数が東京は2040年には、現在の2倍になることが予想される。まだまだ高齢者が増えて、支えていく若い人たちの数はずっと減っていくと思料され、この問題の解決に全力を尽くさなければならない。
1974年生まれの人が、2014年に39歳、子供を産み育てるというチャンスがない。若い女性の数、あるいは男女も含めた20代、30代の数を、どのようにこれから危機感として捉えていくかだと思う。
なだらかな人口減少になれば、いいと思うが、人口減少社会は避けられないとしても、それを超えた極点社会になると一挙に地方が500以上の自治体が消えてしまって、そして東京の過密さ、過酷さは変わらないという、極めてアンバランスな世界が日本で生じてしまうので、できるだけ早くこの対策に取りかかる必要があり、地方創生の行政の任は格段に重いと言わねばならない。
ただ、その中身はかつての全国総合開発計画(全総)や「ふるさと創生」「地域振興券」などと同じレベルでしかない。
地方創生プランの看板になっているカジノ誘致は、かつての地方リゾートの開発、第三セクター経営の失敗と同じ轍(てつ)を踏む可能性が高い。今や地方の責任と独自性に基づき自らの発想と責任において、地方それぞれの産業を創生していく覚悟と発想と実行性を発揮していかなければならない。
そして国は、少子化対策こそ喫緊の課題であることを認識し、生産人口増勢のためあらゆる方策を検討し実行しなければ、国家財政破たんの危機を回避できないことを肝に銘ずべきである。
(あきやま・しょうはち)






