前大戦の史的意義の再検討
真実に準拠し伝えよう
安全保障に迫られた開戦前
12月8日の真珠湾奇襲で始まった日米戦争……実はその前に多くの前提があった。戦後日本人が刷り込まれた史観は、すべて日本の軍国主義が悪いというもので、現在に至る迄かかる史観に毒されている向きがある。確かに、所謂(いわゆる)「支那事変」では日本軍が内陸に引き込まれ過ぎて解決が見えず、“クワグマイヤ(quagmire=泥沼)”に陥っていったのだ。
日本という国は、古来より中華帝国に対し独立を保ってきた。しかしながら、卑弥呼の時代には大和王朝の基礎は確立されておらず、中華帝国に臣従していたものと思われる。そして、仏教伝来(552年)を契機として、2国間の交流が始まり、聖徳太子が隋の煬帝に使わした小野妹子が「日出る処の天子」から「日没する処の天子」に対する書簡を呈している。つまり、当時中華帝国に対しアジアの地域すべて臣従している情況下において、日本のみが、「独立国」としての面子を維持していたのだ。ただ、足利義満が「臣源」とした書簡を明帝王に送ったほかは、秀吉は、「封爾(なんじ)為日本国王」という明の皇帝からの書簡に対し怒りこめて投げ棄てたと伝えられている。
ところで、明治開国以前から、アジア諸国は欧米列強の脅威に曝されてきた。日本とタイ国以外は、米、英、仏、独、蘭、葡、露の植民地だった。日清戦争の結果、朝鮮は朝貢国から独立したが、他は旧態依然。対米英戦争ではこれら植民地解放という大義名分もあった。事実、今日多くの東南アジアの国々が独立しているが、日本がその種を蒔(ま)いたことは間違いない。筆者は外交官としてこれらの地に駐在していた際、これら国民の日本に対する親愛・感謝の気持を身に沁みて感じていた。皆口々に――「日本の御蔭」と言う。日本において、これが「侵略」の一語で片付けられるのは如何にも悲しい。
さて、米大統領ルーズヴェルト(当時子供達は、彼を「ズルベルト」と呼んでいた!)は、英首相のチャーチルに頼まれて日本を挑発したのだ。欧州においてナチス・ドイツに押しまくられていたチャーチルは何としても米を戦争に巻き込みたい。しかし、慎重なルーズヴェルトは簡単に動きそうにもなかったのだ。そこで日本を追い込みたかったのだ。
もともと石油資源を殆ど欠く日本にとって、一番効いたのは禁油政策で、海軍に対しては致命的だった。日本も簡単には屈しなかった。しかしながら、当時の日本は8000万に近い人口(その半分が農業人口)を支えねばならなかった。日本には稲作や養蚕による生産物を除けば、綿、羊毛、錫、ゴム、石油など重要な産品がなかった。その殆どを他国に依存していた。これらを断ち切られた暁には日本は立ち行かなくなる。
こうした事情を十分勘案して米国は日本を潰そうとしたのだ。これらの事情を背景に、マッカーサーは言う(米国上院軍事外交合同委員会公聴会・1951年5月3日)。「日本が戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障の必要に迫られてのことだった」。
マッカーサー自身が「侵略戦争」を否定したのだ。しかしながら、日本ではその後1993年に「河野談話」が、また、95年には「村山談話」が出ている。日本はどうしてこのように「骨抜き」になったのか。筆者が機会あるごとに指摘していたのだが、米国の占領政策は、日本が再び力をつけて米国に歯向かわぬよう、精神的にも骨抜きにすることだった。これが所謂「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」(War-Guilt Information Program)の一環だった。かかる歴史認識の自虐性が未だに続いている。
曰く「南京事件」、曰く「従軍慰安婦」……従来から日本軍の軍律の厳しさは世に知られていた。義和団の乱で知られる北清事変の際、他の列強が北京の街中で掠奪(りゃくだつ)を行う中で、日本軍は故宮博物館を封鎖して守り、宝物の安全が確保されていたという。事実かかる日本軍の規律は世界中に膾炙(かいしゃ)された。
この辺で我々は、日本精神を誇り、未来を切り開くためにも自信と誇りを取り戻し、歴史の真実を知り自信を持って生きることが大切であろう。幕末の志士が「敷島のやまと心を人問わば朝日ににおう山桜花」と詠んだのは、単に個々人の考えではなく、幕末期の日本を代表する名歌ともいえる。明治日本は、ひたすら西洋から学び、自らの封建制を反省してきた。
明治日本の如く短期間で普遍性(当時の「西欧風」)に富む社会を作り上げた国はないと自負してよい。西欧ではフランス大革命もナポレオン戦争を経験し、かつ、普仏戦争を経てドイツ帝国が確立するなど、新しいヨーロッパ秩序が確立しつつあった。当時、ロシアは依然としてロマノフ王朝が君臨する地で、東へ東へと勢力を拡大しつつあった…。
繰り返し言おう――歴史の真実に準拠し、日本人の誇りを未来に向かって語り継ごうではないか。
(おおた・まさとし)