高まる米の対北非核化圧力

高永喆氏

 中間選挙が終わり、米国で北朝鮮への非核化圧力が強まっている。

 有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は12日、北朝鮮が公表していない推定20カ所の弾道ミサイル基地のうち、少なくとも13カ所を特定したとする報告書を発表した。

 また13日のボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、民主党のエドワード・マキ上院議員は「トランプ大統領が金正恩(朝鮮労働党委員長)に騙されている。金正恩が核と弾道ミサイル計画を放棄する具体的で明確な行動を取るまでは、北朝鮮と会談してはならない」と主張した。

 去る2005年、米国はマカオのデルタ・アジア銀行(BDA)の北朝鮮関連資金2500万ドルを凍結した先例があるが、今回は中間選挙の翌7日、6300万ドルの北朝鮮資産を凍結した。

 与党の共和党は上院で勝利したが、下院では野党・民主党が過半数を獲得した。しかし、最近の動きを見ると、民主党の下院議員たちがトランプ大統領に強硬な対北非核化政策を強く求めている。

 トランプ大統領は与党・共和党のみならず、野党・民主党からも後押しされている。結果的に中間選挙は国内問題から対北核問題に集中できるターニングポイントになったわけだ。特に民主党は、人権問題を重視する。米国人大学生ウォームビア氏の拷問死、15万政治犯収容所の人権問題などに対し政府により強硬な対応を求めるだろう。

 トランプ政権の対北政策の要点は、①時間を急がない②核・大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験禁止③核査察まで制裁継続―の3点である。最近、北朝鮮の外務省高官は今年4月に採択した「経済建設総集中路線」を再び「経済・核武力建設の並進路線」に戻す可能性に言及した。北の非核化は難しいとの見方もあるが、まだゼロとは限らない。

 制裁が続けば経済崩壊の危機が訪れるが、今の北朝鮮住民は餓死より決死的な蜂起に踏み切る可能性も否定できない。それこそ、金委員長のジレンマであり悩みである。

 難局打開に向けた抜け道は9月の南北平壌宣言で約束した韓国訪問だが、身の安全が保証されない。内外から北非核化圧力を受ける文在寅政権も限界がある。さらに現在、文政権は経済失政で「(実際の)支持率が30%まで落ちている」との情報もある。

 金正恩の選択肢は非核化に向けて前向きに舵(かじ)を切るしかない段階を迎えている。それこそ、体制が延命できる近道であるからだ。

(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授)