川崎通り魔、規範意識高め凶悪犯罪防止を
川崎市多摩区の小田急線登戸駅周辺で、スクールバスを待っていた小学生ら19人が男に次々と刺され、小学6年女児と別の児童の父親である外務省職員が死亡した。襲撃された子供たちが味わった恐怖と苦痛を思うと激しい怒りを禁じ得ない。
バス停前で切り付ける
男は両手に柳刃包丁を持ち、外務省職員の背中を刺した後、バス停前に並んでいた児童に切り付けた。亡くなった女児は首の辺りを切られ、職員も首や鎖骨、背中を計4カ所刺されていた。周辺は血の海のようになっていたという。凄惨極まりない事件だ。
男は現場で自分の首を刺し、搬送先の病院で死亡した。襲撃時には包丁4本を持っており、神奈川県警は計画的な犯行とみて、殺人容疑で動機などの解明を進めるが、どのような理由があれ、こうした無差別な凶行は断じて許すことはできない。
男は子供たちを襲う直前に「ぶっ殺してやる」と叫んでいたという。不特定多数の人を巻き込む「拡大自殺」を図ったのではないかと見る専門家もいる。拡大自殺の背景には社会への強い復讐感情があるようだが、そうだとすれば、あまりにも身勝手な動機である。
事件を受け、安倍晋三首相は柴山昌彦文部科学相、山本順三国家公安委員長に、全ての小中学生の登下校時の安全確保のため、関係省庁や自治体などと連携して早急に対策を講じるよう指示。「子供たちの安全を何としても守らなければならない」と強調した。
過去にも子供たちに対する無差別襲撃があった。2001年6月に大阪教育大付属池田小学校で、無職の男が児童8人を刺殺し、教師ら15人に重軽傷を負わせた。今回の事件もそうだが、弱い立場の子供たちを守り切れなかったのは痛恨の極みだ。
路上での襲撃という点では、08年6月に東京・秋葉原の歩行者天国に派遣社員の男がトラックで突っ込み、ナイフで通行人らを襲って7人が死亡し、10人が重軽傷を負った事件とも似ている。こうした事件を防ぐことは決して簡単ではないが、それでも社会の安全確保のために絶え間ない努力が求められる。
登下校時の誘拐や性犯罪などの被害から子供を守るには有効なスクールバスも、今回の事件では被害を増やす要因ともなった。バス周辺の職員の配置を手厚くするなどの対策を取るべきだろう。保護者らが子供たちに寄り添い、不審者の存在に目を光らせることも大切だ。
最近は、防犯カメラの映像を解析して不審者を自動的に検出できる防犯技術もあるという。犯行を行おうとする人が無意識のうちに起こす体の振動を感知するもので、海外では多くの警察が導入している。日本でも活用を検討すべきではないか。
家庭や学校の教育向上を
根本的には、家庭の教育力向上や学校での道徳の授業の充実で規範意識を高めることが求められる。今回の事件で子供たちを襲った男が、社会に対する恨みを持っていたのだとすればなおさらだ。親や教師が責任を持って子供たちに命の大切さや他人への思いやりの重要さを伝え、凶悪犯罪防止につなげたい。