【社説】尖閣防衛 中国海警局の装備増強を懸念


尖閣諸島

 中国の習近平政権が、海上法執行機関である海警局の武器使用に関する権限を定めた「海警法」を施行してから1年が経過した。

 中国は沖縄県石垣市の尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、中国海警船が尖閣沖の領海侵入を繰り返している。日本固有の領土である尖閣を守り抜かねばならない。

 海警法施行から1年

 海警局は日本の海上保安庁に相当する組織。2018年に軍の最高指導機関である共産党中央軍事委員会の指揮下に入り、「第2海軍」とも称される。海警法は、管轄海域での「権益保護と法執行の履行」を海警局の任務と規定。中国の主権と管轄権を侵害する外国組織などに「武器使用を含むあらゆる必要な措置」を取る権利があると明記している。

 管轄海域の具体的な定義はないが、草案段階では「内水、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚および中国が管轄するその他の海域」と位置付けており、南・東シナ海の広大な海域が対象となり得る。曖昧な定義で力による現状変更を正当化しようというのであれば到底容認できない。

 尖閣周辺では中国海警船が頻繁に活動している。昨年1年間に接続水域内を航行した日数は、これまでで最も多かった20年と同水準の332日。連続航行日数は157日となり過去最長を更新した。領海侵入が確認されたのは計40日に上る。

 海警法施行後の1年で、懸念されていた武器使用は発生していない。しかし、警戒を緩めることはできない。中国国内では昨年から海軍のフリゲート艦約10隻が改修中で、今後は計20隻程度が海警船に転用される見通しだという。改修で対艦ミサイルや対空ミサイルが撤去される一方、76㍉砲や30㍉機銃などはそのまま装備されている。

 中国海警船は海警法施行前から、ベトナムやフィリピンなどと領有権を争う南シナ海でこれらの国の漁船に「違法行為があった」として発砲したり、衝突して沈没させたりするなどしてきた。尖閣沖の領海に侵入した際には、付近を航行していた日本漁船に接近しようとする事案も発生している。装備増強によって尖閣周辺で挑発がエスカレートすることが懸念される。

 岸田文雄首相とバイデン米大統領が先月、テレビ会議形式で行った日米首脳会談では、バイデン氏が対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条を尖閣に適用する方針を明言した。日米両首脳がこうした方針を確認することはもちろん重要である。

 実効支配強化策を進めよ

 だが日本は米国頼みでなく、自分たちで尖閣を守るという決意とそのための具体策を講じることが求められよう。平時でも有事でもない「グレーゾーン事態」に対処するための法整備や、公務員常駐などの実効支配強化策を進めるべきだ。

 石垣市は20年10月、尖閣の住所地の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変更。昨年8月には新たな標柱も作り、設置のため上陸許可を求めたが、政府は許可しなかった。中国を刺激することを恐れていては、尖閣を守ることはできない。