【社説】北方領土の日 4島一括返還に強い決意示せ
42回目の「北方領土の日」を迎えた。わが国固有の領土である択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島が旧ソ連によって不法占拠され、今なお、その状態が続いている。
岸田文雄首相はきょう開かれる北方領土返還要求全国大会でロシアに改めて抗議するとともに、4島一括返還への強い決意を明確にすべきだ。
高圧的姿勢のプーチン氏
日本の敗色が濃厚だった第2次世界大戦末期の1945年8月9日、ソ連は当時有効だった日ソ中立条約を破り、日本に対し一方的に宣戦布告した。
ソ連は圧倒的な兵力を投入して、日本がポツダム宣言を受諾し終戦を迎えた8月15日以降も侵攻を続けた。歯舞・色丹を含む北方領土全域が占領されたのは、日本が降伏文書に調印した9月2日よりも後の9月5日だった。
それだけではない。旧日本軍人や民間人ら約60万人を国際法に違反してシベリアに抑留し、飢餓や酷寒の中での過酷な強制労働に従事させて約6万人を死に至らしめた。このような不当な歴史的事実を不問に付し、ロシアが北方領土を不法占拠したまま日露平和条約を締結することはあり得ない。
日本はロシアと真摯(しんし)に向き合い、粘り強く交渉を続けてきた。ゴルバチョフ時代からエリツィン時代にかけて、ロシアはシベリア抑留の過ちを認め、日本国民に謝罪した。北方領土問題についても、1993年の東京宣言で北方四島の島名を列挙して「法と正義の原則」に基づき解決するという明確な交渉指針を示した。
しかしプーチン政権は時計の針を戻すかのように、日本に対し高圧的な姿勢に転じた。プーチン大統領は「4島に対するロシアの主権は第2次世界大戦の結果」と強弁している。
2020年に改正した憲法には「領土割譲の禁止」を明記し、北方領土の返還が困難なことを改めて明確にした。北方領土で軍事演習を繰り返し、昨年7月にはミシュスチン首相が択捉島訪問を強行した。
ウクライナ情勢を見ても、ロシアのやり方は明らかだろう。両国は1997年に締結した基本条約「友好協力条約」で領土保全や国境不可侵などを取り決めたが、ロシアはこれを無視し2014年、ウクライナのクリミアを併合する暴挙に出た。
ウクライナ東部の親露独立派を支援し、ロシア下院ではその実効支配地域を国家承認する動きも進む。ロシアは現在、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止するため、10万人もの兵力をウクライナ国境付近に展開し威圧しており、侵攻する可能性もある。
われわれは、同じようにロシアに領土を奪われたウクライナを支援するとともに、ロシアに対し「法の支配」に基づく国際秩序を守るよう、制裁を強化すべきだ。
一人一人が関心高めたい
不法に占拠された北方領土の返還実現は日本国民の悲願であることを改めて内外に示し、ロシアとの交渉に臨むべきである。国民一人一人が返還運動への関心を高めることが、一層求められている。