衆院選公示 自公か「立共」か政策選択を


衆院選が4年ぶりに公示され、31日の投開票に向けて選挙戦がスタートした。選挙区、比例代表合わせて465議席を争う。自民、公明連立政権の継続か、共産との政権協力に史上初めて踏み込んだ立憲民主中心の野党か。有権者は令和の日本をどちらに委ねるのか、熟慮して選択すべきである。

共産の統一戦線戦術

日本記者クラブ主催の党首討論会で討論する与野党の党首=18日午後、東京都千代田区

日本記者クラブ主催の党首討論会で討論する与野党の党首=18日午後、東京都千代田区

 自民、公明の与党が最も問われるのは、過去4年間の自公政権の実績と岸田文雄新政権への信頼度だろう。安倍晋三政権時代は国政選挙で圧勝し続けてきたが、初挑戦となる岸田首相は「与党で過半数(233)」を獲得できるかが勝敗ラインだとの認識を示した。最低ラインの目標設定だが、政権への順風は吹いていない。

 政権発足からわずか2週間余りで、力量も未知数だ。新型コロナウイルス対策や経済対策が選挙戦での最大のテーマとなろうが、岸田首相の政策が有権者にどこまで理解されるかがポイントとなろう。

 一方、政権交代を目指す立憲民主中心の野党陣営は、約220の選挙区で候補者を一本化した。前回衆院選の3倍を超える数で、与野党対決の構図を作り上げた。過去の衆院選で獲得してきた立憲票と共産票を合計すると、自民票に公明票を加えた数を上回る選挙区がいくつもあり、熱戦が展開されよう。

 ただ、その足し算がそのまま結果につながるのかは疑問だ。立憲が共産と「限定的な閣外協力」で合意したことを有権者がどう評価するか定かでないからである。「限定的」とはいうものの、共産主義革命を目指す政党と組んだ政権を想定した選択選挙は過去になかった。そこに国民の戸惑いがあり、不安感が生じている。

 立憲の福山哲郎幹事長は「自民党は自衛隊を憲法違反と言っていた社会党と連立を組んだ」と語る。政策が正反対でも自民は連立政権をつくったではないかとの主張である。だが、自社さ政権時の村山富市首相(社会党)は「日米安保体制の堅持」「自衛隊は合憲」などと社会党の基本政策を次々と転換した。今回、共産は日米安保条約廃棄や自衛隊の将来的な解消といった党の政策を政権に持ち込まないと約束したという。

 ただ、共産の基本的な戦術は「さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府をつくるために力をつくす」(党綱領)ことにある。そして、ひとたび「野党連合政権」ができれば、その中で主導権を握り、他党の政策を変えながら社会主義・共産主義政府へと進んでいくのが革命の道筋なのだ。そのことを有権者は認識する必要がある。

 立憲の枝野幸男代表は「政権そのものは単独政権」とし、緊急時の自衛隊の活動は、枝野内閣の行政権の発動として、責任をもって対応すると述べた。ただ、政策を具体化する際、共産やその他の党との調整を円滑に行えるのか極めて疑問だ。

投票の判断材料を増やせ

 候補者は「分配」の財源論や安全保障、少子化、憲法改正などでも論戦を深め、有権者が一票を投じる際の判断材料を増やしてもらいたい。