国際課税ルール 税逃れ防止への合意を歓迎


経済協力開発機構(OECD)が多国籍企業の税逃れを防ぐため、新たな国際課税ルールに関する交渉会合を開き、136カ国・地域が最終合意した。
 利益に応じた適正な税金を支払うことは企業の義務である。数多くの国・地域による合意が得られたことを歓迎したい。

法人最低税率が15%に

 合意は、世界共通の法人税の最低税率を15%に設定することと、国境を越えて活動する巨大IT企業などに対するデジタル課税の導入の2本柱。最低税率の設定で、企業誘致を目指す国々による法人税率の引き下げ競争に歯止めがかかることが期待される。

 税率の低いアイルランドやハンガリーも合意に加わり、2012年に本格化した国際課税強化の議論が約9年越しで決着した。背景には、主要国で新型コロナウイルス禍に伴う新たな財源が必要になり、共通の法人税率を定める国際的な機運が高まっていたことがある。

 OECDの推計によれば、最低税率導入に伴う税収増は世界で16兆円余りに上る。一方、軽課税国に配慮し、課税対象所得の適用除外を拡大する10年の経過措置期間を設けた。

 もう一つのデジタル課税は、工場や支店のような拠点がなければ課税できないという約100年前に確立された原則を見直し、サービスの利用者がいる国や地域も課税できるようにするものだ。こうした新たなルールによって、オンライン空間で事業を展開する巨大IT企業などの課税逃れを防止しなければならない。

 デジタル課税は、売上高が200億ユーロ(約2・6兆円)、利益率が10%を超える企業が対象となる。全世界で100社程度が該当するという。売上高の10%を超える利益の25%について、売り上げに応じ各国・地域に配分する。

Google本社(Wikipediaより)

 欧州などで既に実施されている独自のデジタル課税は、廃止することで一致。米国はこうした課税を自国企業への狙い撃ちだと懸念を示してきたが、合意によって米欧間の全面的な貿易摩擦は回避されそうだ。グーグルやフェイスブック(FB)、アマゾン・ドット・コムなどの米巨大IT企業も合意を歓迎する姿勢を示した。

 合意にはケニア、ナイジェリア、パキスタン、スリランカの4カ国が参加しなかった。今後も参加を働き掛け、ルールの実効性向上に努めるべきだ。

 最低税率設定やデジタル課税の導入に伴う日本企業への影響は限定的とみられている。日本企業の多くはもともと税率の低い国に拠点を移す発想がなく、むしろ導入によって競争が公平になると評価する見方が強い。日本企業にとってはプラスの面が大きいとみていい。

スムーズな導入を図れ

 新たな国際課税ルールに関しては、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議も今回の合意に支持を表明し、閣僚レベルで決着した。

 各国・地域は22年に条約の締結や法改正を進め、23年から導入することを目指す。各国・地域は協調してスムーズな実現を図り、適正な課税を可能にする必要がある。