8月豪雨被害、警戒レベル4で避難の周知を


 西・東日本の太平洋側に延びる前線が1週間ほど停滞しており、各地で記録的な大雨による土砂災害や河川の氾濫が相次いでいる。時限的に観測史上最高の雨量となる地域もあり、以前にも増して気象庁・自治体の警戒レベル情報を基に命を守る行動を早めに取る必要がある。

土砂災害や河川の氾濫も

 

 11日から続く今回の長雨は、北の冷たい空気のオホーツク海高気圧と南の暖かく湿った空気の太平洋高気圧が日本列島を挟んで拮抗し、発生した前線が停滞してもたらされたものだ。真夏の猛暑から梅雨に戻ったような気圧配置になった。空気中の水蒸気量は気温が高いほど多くなるため、気象庁は早い段階から広範囲で大雨になる恐れがあると注意を呼び掛けていた。

 人的被害は8人の死亡、4人の行方不明などとなっている。国土交通省によると、18日午前7時の時点で61の河川で氾濫を確認し、土砂災害は土石流31件、地滑り15件、がけ崩れ72件の計118件発生しており、33都府県425市町村に土砂災害警戒情報を発表している。

 九州では長崎県・雲仙岳で降り始めから1200㍉を超える総雨量を記録するなど、年間降雨量の半分以上の豪雨となっている。雲仙市では13日に住宅2棟が土砂に流され、2人が死亡したほか、雲仙温泉街の裏山が崩れる土砂災害が発生し、温泉旅館に源泉からお湯を引いている配管が壊れるなど観光地を直撃する被害が起きた。

 新型コロナウイルス感染拡大に加えての打撃だ。長崎県は雲仙市に災害救助法を適用した。今後各被災地で救助・復旧に向けて同法の適用、激甚災害指定などがなされるべきだろう。

 気象庁は13日午前、広島県に大雨特別警報を発表して①これまで経験したことのないような大雨②災害が既に発生している可能性が極めて高く、警戒レベル5に相当③命の危険が迫っているため直ちに身の安全を確保――などと訴えた。

 広島県では14日、80代と70代の男性2人が行方不明となり、廿日市市の宮島沖で広島市の60代の女性が漂流し死亡しているのが確認された。

 大雨警戒レベルで最も高いレベル5の「緊急安全確保」など災害発生の危険度と住民に求められる行動を示す5段階の警戒レベルを、気象庁は2年前に導入している。気象庁からの情報を受けて警戒レベルを住民に伝えるのは自治体だが、実効性に課題も指摘されている。

 住民避難はレベル4「避難指示」の段階でなされなければならないものだ。自治体が発信する学校や公的施設など避難場所の情報を基に住民が移動する。警戒レベル5「緊急安全確保」の発令時点では、既に災害が発生した可能性が極めて高いので、避難所への移動は手遅れの恐れがある。

 住民は平素から計画を

 このため「緊急安全確保」で気象庁が示す住民が取るべき行動は「今いる場所よりも安全な場所に移動する」という場当たりなものだ。その前にレベル4までの避難を心掛けて、住民が平素から計画し、自治体もこれを周知、徹底する取り組みが必要である。