欧州艦隊 日本は安保協力を深めよ


 欧州主要国が今年に入り相次いでインド太平洋地域に艦艇を派遣する動きを拡大している。艦艇は日本への寄港、自衛隊との共同訓練も実施する。日本も欧州諸国との安全保障協力を深めたい。

 急速に強まる対中警戒論

 欧州で対中警戒論が急速に強まる中、英仏独は昨年9月、中国の南シナ海についての主張と活動は国連海洋法条約違反であるとの共同の立場を文書で国連に提出した。フランスは今年2月にフリゲート艦を日本近海に送り、また攻撃型原子力潜水艦を南シナ海でも航行させた。

 今月には陸上自衛隊とフランス陸軍、米海兵隊の共同訓練「アーク21」が行われた。日米仏3カ国の陸上部隊が日本国内で実動訓練を行うのは初めて。海上自衛隊と米豪仏の海軍もアーク21の一環として、東シナ海で共同訓練を行った。いずれも尖閣諸島(沖縄県石垣市)など離島に中国が上陸強行した場合を想定したものである。

 日米は4月の首脳会談で「自由、民主主義、人権などの普遍的価値を共有する同盟国」であることを確認した。両国は志を同じくする諸国と協力し、法治に基づく国際秩序を主導しなければならない。

 英国やドイツなどほかの欧州諸国も、フランス同様の行動を展開する。英国は2017年に就役した英海軍史上最大級の空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群をインド太平洋地域に派遣。日本には初めて寄港し、自衛隊などとの共同訓練も行う。

 欧州外での作戦に比較的慎重なドイツも、今年8月にフリゲート艦を極東に送る。日本など地域の国々と安全保障で連携強化を目指す。ドイツのクランプカレンバウアー国防相は、自衛隊やインド太平洋諸国の軍隊と共同訓練を実施する可能性にも言及した。

 ドイツ政府は昨年9月、戦略文書「インド太平洋ガイドライン」を閣議決定。海外領土を持たないドイツが極東に艦艇を送るのは極めて異例だ。ドイツ軍艦が南シナ海を通過すれば、02年以来19年ぶり。海洋法秩序が中国の挑戦にさらされているという深刻な懸念からだ。

 オランダ海軍も今夏、英空母打撃群と合流し、太平洋で海自などと合同演習を行う。フリゲート艦「エフェルトセン」は5月末に出航し、南シナ海を航行するという。

 欧州各国が本国から遠く離れたインド太平洋地域に足を延ばし、多国間のみならず2国間の訓練を展開することは、中国と地理的に近い日本にとって極めて望ましいことだ。

 共同訓練で抑止せよ

 中国の習近平国家主席は、中台統一に向け武力行使も辞さない方針を示しており、米軍高官は「6年以内に武力行使する危険性がある」と警告した。尖閣周辺では中国海警船が領海侵入を繰り返し、2月には中国海警局の武器使用について明記した海警法が施行された。

 各国は中国による台湾や尖閣への侵攻を現実の危機としてとらえ、真剣な対応準備を進めている。日本は欧米諸国との共同訓練を対中抑止につなげる必要がある。