反安保勢力の政治闘争にすぎぬ県民投票を煽る沖縄2紙のフェイク報道

◆地元は条件付き容認

 沖縄をめぐる最大のフェイクニュースは、「辺野古埋め立て反対は民意」というものではなかろうか。地元紙はそれを印象付ける編集手法いわゆる印象操作がお手の物。そう思えてならない。

 例えば昨年12月に沖縄防衛局が土砂投入を開始すると、沖縄タイムスは「『胸張り裂けそう』 国の強行 県民悲痛」と大見出しで伝えた(同12月15日付)。「民意無視に涙と怒り」との故翁長雄志前知事夫人の声も見出しにある。それが県民総意。そんな印象操作だ。

 では地元、辺野古の声はどうか。同じ紙面の下段に小さく「普天間問題終わらせて 辺野古住民」とあるだけだ。まるで「報じていますよ」との証拠づくりのように映る。記事には「米軍キャンプ・シュワブは身近な存在。移設を賛否で言うなら、『賛成の方が強い』」などとある。地元の辺野古は条件付きで移設を容認しているのだ。

 そこがかつての成田闘争と根本的に違うところだ。1960年代、千葉県成田市の国際空港建設をめぐって県や市は賛成したが、地元の三里塚の農民らは反対した。それで「三里塚闘争」とも呼ばれた。辺野古はこの逆だ。

 ところが、極左勢力は地元にまったく受け入れられていないのに「辺野古闘争」と言い、地元紙もしばしばそう表現する。これも印象操作だ。

◆条例名でも印象操作

 辺野古移設の賛否を問う県民投票はどうだろうか。当初は「賛成」「反対」の2択だったが、これでは普天間移設を願う複雑な県民感情をくみ取れないとして普天間の地元、宜野湾市や沖縄市など5市が反発し投票協力を拒否。県民の3割が投票できなくなった。それで急きょ、「どちらでもない」を加えて3択に修正し実施されることになった。

 ここにも印象操作が隠されている。第1に、県民投票条例の名称だ。「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」と「米軍基地建設」とし、肝心の普天間飛行場問題の原点である危険性除去の記述がどこにもない。取って付けたように条例1条に「普天間飛行場の代替施設として」とあるだけだ。

 県は「辺野古米軍基地建設」ばかりを強調し、地元紙も「新基地建設」の一点張りだ。琉球新報1月26日付社説のタイトルは「新基地巡る議論深めたい」と、ここでも「新基地」だ。ちなみに移設先は既に存在する米軍キャンプ・シュワブの海岸沖だ。

 沖縄タイムスは27日付1面肩で「『反辺野古 圧倒的民意を』 シュワブ前 投票成功へ集会」と報じている。こうなれば、もはや反対派機関紙だ。トップ記事は「大坂、全豪テニスV」で、これがなければ反辺野古の大見出しがさらに躍ったことだろう。

 第2に、投票条例は知事に広報活動などの中立性を求めているが、玉城知事は「工事阻止」を唱え、反故(ほご)にしている。12月の土砂投入の際、反対派の座り込む辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前を訪ね、「(工事阻止を)諦めない」と気勢を上げた。辺野古まで行きながら、地元集落には目もくれなかった。

 これを地元紙は快挙のように報じた(同15日付)。県民投票には公選法のような規制や罰則もないから、メディアはどう報じようが勝手で、中立・公平性がきわめて乏しい。

◆結果に法的拘束力なし

 第3に、外交・安全保障は「国の専管事項」だ。反辺野古派が県民投票を主張した背景に翁長雄志前知事の埋め立て承認取り消しを違法とした福岡高裁判決(最高裁で同判決が確定=16年12月)がある。

 「辺野古反対が民意」との県の主張に疑問を呈したからだが、判決はそれだけでなく「国防・外交政策に知事の審査権は及ぶものの、地方公共団体が所管する事項ではない」と指摘している。

 第4に、投票結果に法的拘束力がないにもかかわらず、地元紙は国策を変えられるかのように報じている。これまで安保をめぐる住民投票は全国で4件あったが、いずれも国策に影響を与えたことはなく、国は粛々と安保政策を推進している。

 こうしてみると、沖縄の県民投票は反安保勢力の政治闘争にすぎないことが浮き彫りになる。それを煽(あお)る地元紙はポピュリズムの極みである。壮大なフェイクを平然とやってのけている。

(増 記代司)