「反基地無罪」叫び沖縄で違法行為繰り返す過激派を支援する左派紙
◆左翼のノスタルジー
今年、1968年の回顧モノが話題になった。この年、フランスではパリのカルチェラタンを舞台にした5月危機、わが国では全共闘やベトナム反戦運動などが高揚し、ヒッピーなどの反体制文化がもてはやされた。それから半世紀を経て、回顧モノの芸術展が各地で開かれた。左翼のノスタルジーの強さを改めて知る思いがする。
こうした運動の背景に中国の文化大革命があった。当時の大学構内には毛沢東が唱えた「造反有理」や「革命無罪」の立て看板が林立した。今日の中国では反日暴動を正当化する「愛国無罪」も登場している。いずれも革命のためなら手段を選ばない暴力至上のマルクス主義に由来する。
それを今、68年へのノスタルジーどころか、地で行っているのが沖縄の反辺野古運動だ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対し、違法行為を繰り広げても「反基地無罪」を叫んでいる。その象徴的人物が反対派リーダーで沖縄平和運動センターの山城博治議長だ。
2016年1月に辺野古の米軍キャンプ・ゲート前にコンクリートブロック1486個を積み上げて威力業務妨害、同年8月に東村高江の米軍北部訓練所付近で沖縄防衛局職員に暴力を振るい公務執行妨害などで逮捕され、四つの罪を問われた。
那覇地裁は今年3月、「犯罪行為で正当化できない」と断じ、懲役2年・執行猶予3年を言い渡した。その控訴審判決が今月13日、福岡高裁那覇支部であったが、山城被告の有罪は揺るがなかった。これに対して山城被告は「不当判決」「弾圧は許さない」と主張し、地元紙も同調している。まさに「反基地無罪」の図である。
◆山城被告を英雄扱い
沖縄タイムス14日付は1面肩で「山城議長の控訴棄却」と大きく報じ、社会面では「『不当判決』怒りと失望」「明日からも抵抗続ける」と、反対派の機関紙さながらの紙面を組んだ。記事には琉球大の森川恭剛教授(刑法)が政府の進める基地建設を違法だとし、「違法行為への抵抗 罪ならず」と、「反基地無罪」にお墨付きを与えている。
ちなみに、これまでの裁判で違法とされたのは、ことごとく移設反対の県側の方だ。それを森川氏は白を黒と言いくるめるのだから、筋金入りの御用学者に違いない。
在京紙の14日付を見ると、産経が「反対派リーダー 2審も有罪」と3段見出しで報じたが(14版)、他紙では毎日が辛うじて短報で扱っただけだ。この日は辺野古へ土砂が投入され、夕刊では各紙1面トップを飾った。それだけに過激反対派の動向はもっと注目してしかるべきだ。反辺野古報道に熱心な朝日はあえて黙殺したのだろうか。
短報で報じた毎日も14日付夕刊の社会面トップに「『やめろ』美ら海に叫び 土砂投入 県民抗議」の見出しを立て、山城被告の控訴審有罪の報道をかき消すように次のように書く。
「(山城被告は)マイクで懸命に声を張り上げた。『激しい憤りを感じる。ふざけるな。ウチナーンチュ(沖縄の人)の誇りと燃え上がるような正義の情熱を高々と掲げ、ゲート前で闘い抜こうじゃないか。みんな頑張ろう、政府に負けるな』」
まるで英雄扱いだ。朝日14日付夕刊は社会面を全面使って「青い海 壊す土砂 『沖縄ずっとゴミ箱ですか』」と情緒的な紙面に終始する。埋め立てを批判するなら沖縄県は全国でも有数の埋め立て県だ。辺野古より広い埋め立てはいくらでもある。大型フェリーが着岸する那覇市新港埠頭や那覇空港の第2滑走路がそうだ。それもゴミ箱なのか。
沖縄県のホームページには「(埋め立ては)新たに国土を造成し、新たな土地利用を可能にする公共性が非常に高い行為です。埋立地は、漁港及び臨海部の産業活動の発展や、経済発展に貢献してきました」とある。安全保障を例外扱いするのは偏見と言うほかない。
◆スパイ工作の疑念も
1968年にはメキシコ五輪があったが、パリの5月危機さながらの反政府運動も起こった。その背後にソ連のスパイ工作機関(KGB)が動いていた(菊池謙治著『複合侵略』80年、世界日報社刊)。沖縄の「反基地無罪」はどうなのか、疑念が消えない。
(増 記代司)