反基地活動批判の「ニュース女子」を「倫理違反」としたBPOの偏向度
◆反対運動の実態報道
メディア、とりわけ一部の新聞・テレビの偏向報道が表面化し、その信頼性が問われた1年だった。今年の春から、いわゆる「森友・加計」(モリ・カケ)問題で安倍晋三首相の介入疑惑を指摘する報道が続いたが、結局、それを裏付ける証拠は出てこなかった。そればかりか、あれだけ「安倍たたき」の恣意的報道が行われたにもかかわらず、衆議院選挙で自民党は圧勝して、左派メディアの信頼性は失墜してしまった。
モリ・カケ問題についての偏向報道は左派メディア全体に言えることだったが、報道の公平性が問われた左派批判の番組もあった。1月2日放送の東京MXテレビの情報バラエティー「ニュース女子」だ。今月14日、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会(川端和治委員長)はこの番組について、「重大な放送倫理違反があった」との「意見」を公表した。
番組内容は、沖縄県東村高江のヘリパッド建設反対運動をはじめとした反基地活動のうち、これまであまり報道されてこなかった異常な実態を報告したもので、不法行為や過激な反対運動に苦しむ地元住民の声を伝えない左派メディアにいら立ちを覚えていた視聴者からは、好評を得た番組だった。
◆「日当」の疑い指摘
この番組で、BPOが特に問題としたことは三つある。一つは、「防衛局、機動隊の人が暴力を振るわれているので、その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく続いた」との地元住民の証言内容。
もう一つは、左派の市民団体が東京で配布したというチラシを映し出し、そこに「飛行機代相当、5万円を支援します」との記載があったことや、基地周辺で見つかったという茶封筒に「光広 2万」と書かれていた事実から、反対運動の参加者に「日当」が渡されているのではないかとの疑問を呈したこと。この二つに対しては、裏付けがないとした。
最後は、反基地活動の参加者が「1人、2人と立ち上がって」「敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになる」と、リポーターが語ったことに対して、「客観的な事実が認められない」とした。
番組を製作したのは、テレビ局の外部「DHCシアター」(現DHCテレビジョン)だが、こうした不十分な取材で作られた番組を、局側が適切にチェックしないまま放送したとした。
日当を出したとの疑いを提起した市民団体に取材をしなかったことなど、取材が不十分だったのは確かである。しかし、番組は日当の疑いを指摘したものであり、断定はしていないし、それが交通費であろうと何であろうと、お金をもらって沖縄に行って活動をしている人間がいることを知らない国民は多い。また、反基地活動家らが救急車を止めたかどうかの点については、「村民の日々の生活が止まってしまうくらい公道に違法駐車して道路を封鎖する」と、地元住民が語ったのは事実であり、それを視聴者に知らせることは意義のあることだ。
反基地活動に迷惑を被っている住民がいるだけでなく、逮捕者を出すほどの違法行為が起きているのに、反基地活動の異常性に焦点を当てた番組がほとんどないというテレビ界の左翼偏向の方がよほど問題であろう。
◆放送基準守らぬTV
民放連放送基準は「ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない」と定めているとした上で、「一方の側の見解のみを伝え、反対側の見解を一切無視することは許されない」とのBPOの指摘は正しい。しかし、情報バラエティー番組だけでなく、より公正であるべき報道番組でさえも、放送基準を順守しないケースは数知れないのが現在のテレビ界である。その典型が今年1年間繰り広げられたモリ・カケ報道だったが、BPOはそれを問題としなかった。
となると、BPOの中立性が問われることになる。「放送法遵守を求める視聴者の会」呼び掛け人で、文芸評論家の小川榮太郞氏は、著書「テレビ報道『嘘』のからくり」で、次のように指摘する。
「BPOは国民的な声を広く吸収できるような組織ではなく、構成員が左翼とテレビ業界人で占められています」。川端委員長は朝日新聞コンプライアンス委員会委員、委員長代行で映画監督の是枝裕和氏は「9条護憲論者」、委員でジャーナリストの斎藤貴男氏は「マスコミ9条の会」の呼び掛け人。もっと挙げているが、これだけでもBPO人選の偏りが分かろう。
(森田清策)