米軍ヘリ事故、原因究明と再発防止の徹底を
沖縄県の米軍北部訓練場(東村、国頭村)近くの牧草地で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)所属のCH53E大型輸送ヘリコプターが緊急着陸し、炎上、大破した。乗員を含めけが人はなかったものの、近くには集落や小学校もあり、住民が巻き込まれる可能性もあった。
事故を受け、在沖米軍はCH53Eの運用を停止した。日米安保体制に対する信頼を揺るがしかねない事態であり、米軍には原因究明と再発防止の徹底を求めたい。
訓練中の出火で緊急着陸
安倍晋三首相は、事故について「米軍機の飛行においては安全第一で考えてもらわなければ困る」と強調した。当然の抗議であり、米軍は重く受け止めなければならない。
事故の現場は県道70号線沿いで、最も近い民家から約300㍍、豚舎から約100㍍の位置にある。事故機は訓練飛行中に出火したため、緊急着陸したという。
CH53Eをめぐっては、同系統機のCH53Dが2004年8月に宜野湾市の沖縄国際大の敷地内に墜落し、乗員3人がけがを負った事故もあった。CH53EはD型の後継機だ。
沖縄県内の米軍施設で2番目の面積を持つ北部訓練場では昨年12月、総面積約7500㌶の過半に当たる4000㌶が日本側に返還された。代わりに、返還区域に点在するヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)が未返還区域の6カ所に移設され、今年7月から普天間飛行場の輸送機オスプレイやヘリなどが運用されている。
事故現場を視察した翁長雄志知事は「悲しい、悔しい。沖縄県にとって国難とはこのような状況」と述べた。沖縄ではオスプレイが昨年12月に名護市の浅瀬に着水して大破するなど、米軍機の事故が相次いでいる。日本の安全保障のためには在日米軍の存在が欠かせないが、県民の反基地感情の高まりが懸念される。
安倍首相は今回の衆院解散を「国難突破解散」と位置付け、衆院選の主要争点の一つに対北朝鮮政策を挙げている。北朝鮮に関してはこのほど、ミサイルを積んだ移動式発射台(TEL)が格納庫から出る動きが確認され、米韓両軍当局がミサイル発射準備の兆候とみて警戒しているとの報道もある。
核・ミサイル開発を進める北朝鮮や強引な海洋進出を行う中国の脅威に対処するには、日米同盟の強化が不可欠だ。その意味でも、信頼を揺るがした米軍の責任は重い。
特に沖縄は戦略的要衝であり、米軍の存在は死活的重要性を有している。今回の事故の原因だけでなく、なぜ事故が相次ぐのかを徹底究明し、再発防止に全力を挙げて県民の不安除去に努めるべきだ。
基地負担軽減を進めよ
今回の事故を受け、安倍首相は「(沖縄の基地)負担軽減をしっかりやっていく」とも述べた。米軍の抑止力を損なわない範囲で、負担を減らしていくことが求められる。
危険除去と抑止力維持のために、普天間飛行場の名護市辺野古への移設も着実に進める必要がある。