3倍も水増し「65000人」に拘泥する沖縄2紙の反米集会見出し

◆「オール沖縄」のウソ

 6万5000という数字が躍っている。沖縄県うるま市で起きた元米兵による女性暴行・殺人事件に抗議する集会が先ごろ那覇市で開かれた。それを報じる地元紙、沖縄タイムスと琉球新報の20日付1面の特大見出しだ。

 「海兵隊撤退へ 6万5000人結集」(タイムス)

 「怒り、悲しみ限界 6万5000人結集」(新報)

 朝日と毎日も同日付1面で報じたが、参加人数は見出しにない。沖縄2紙だけが鬼の首を取ったかのように参加人数を大きく報じている。いかに数字にこだわっているかが知れよう。

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 集会は翁長雄志知事を支える政党や労組、市民団体、企業らでつくる「オール沖縄会議」が主催し、海兵隊の沖縄撤退などを求める決議を採択した。オール沖縄と言っても、自民、公明、おおさか維新の会は参加しなかった。県下11市の市長のうち、参加したのは2人だけだ。

 それで地元紙は6万5000という参加人数をもってオール沖縄と印象付けたいのだろう。だが、参加人数は「主催者発表」のものだ。主催者は実数よりも大きくするのが通り相場だ。とりわけ政治集会は勢力を誇示するため眉唾が必要だ。実数に近いのは「警察発表」だが、沖縄県警は公表していない。

 それで2紙だけでなく本土紙もすべて「6万5000人(主催者発表)」と書くのみだ。これでは新聞は主催者の政治宣伝を躍らせているに等しい。

◆実際の参加は2万人

 本当はどうだったのか。本紙だけが「参加者は主催者発表で6万5千人だが、隣接するセルラースタジアムの収容人数が1万5千人であることから、実際の参加者数は約2万人との見方が有力だ」(20日付)としている。

 実際、新報に載った「小型無線ヘリから撮影」の全体写真を見ても、2万人程度が妥当なようだ。どうやら主催者は参加人数を3倍以上に膨らませたようだ。

 こうした参加人数の詐欺的な水増しは今に始まったわけではない。地元の人に言わせると、いつものことだ。その始まりは1995年の米兵少女暴行事件に抗議する県民大会だという。

 この時の主催者発表は8万5000人だが、警察発表は5万8000人で、約1・5倍の水増しだった。革新県政下のことで、左翼政党や地元紙などが圧力をかけ、警察発表が出なくなったとされる。

 それをよいことに水増しが平然とまかり通るようになった。2007年9月の歴史教科書検定撤回県民大会は主催者発表が11万人だが、警備会社の調べでは2万人弱にすぎなかった。実に5倍以上の水増しだ。このことは産経などが報じ、よく知られている。

 12年9月のオスプレイ配備反対県民大会は主催者発表が10万3000人だが、この時も本紙は実数を探り「2万人程度」(同11日付社会面)と報じた。大会は沖縄県宜野湾市で開かれたが、会場には一般車両の駐車場がなく、ほとんどの来場者はバス利用で、そのバス台数から参加者数を2万人程度とはじき出した。

 当時、珍しく「警察発表」が公表された。民主党政権の藤村修官房長官が記者会見でうっかり口を滑らせ「警察発表2万5000人」と明かしてしまったからだ(タイムス同年9月11日付)。本紙の2万人より多いが、いずれにしても4倍の水増しだ(ちなみに警察発表は存在しないことになっており、それ以降、公表されていない)。

◆朝日より8倍以上も

 この大会に合わせて国会議事堂周辺で「沖縄・一坪反戦地主会」などの在京団体が抗議行動を行ったが、地元紙は主催者発表をそのまま見出しに取り、「1万人、国会包囲」と威勢よく報じた。

 だが、朝日によれば、警察の調べで約1200人だった(同10日付夕刊)。何と8倍以上の水増しをやってのけたのだ。こんなふうに沖縄紙は主催者発表を実数であるかのように報じて恥じない。

 「嘘(うそ)つきは泥棒の始まり」と言う。故事ことわざ辞典には、平然と嘘を言うようになれば、良心がなくなって盗みも平気ではたらく人になるから、嘘はついてはいけないという戒め、とある。残念なことに沖縄紙にこの戒めは通じそうにない。さて、虚報はどこまでエスカレートするだろうか。

(増 記代司)