共産主義の惨禍を隠し歴史を歪曲する朝日のロシア革命100年報道
◆1千万人超が犠牲に
先週の7日はロシア革命から100年。本紙9日付によると、トランプ米大統領はこの日を「全米共産主義犠牲者の日」と宣布し、1億人を超える共産主義の犠牲者を追悼した。米大統領による追悼日宣布は初めてだという。
トランプ氏は「ロシア革命が抑圧的な共産主義による暗黒の数十年を生み出した」とし、今なお共産体制下で苦しむ人々のために「米国は自由の光を照らす確固たる決意を再確認する」と強調した。本紙ならではのニュースだった。
毎日は3日付に特集を組み、「(革命後の)内戦と飢餓の死者を合わせると、1000万人以上が犠牲となり、150万人以上が亡命」「(スターリンの農業集団化で)30年代に数百万人規模の死者を出した。約70万人といわれる国民が逮捕・処刑される『大粛清』の時代も迎えた」とソ連の惨状を具体的に書く。
産経の遠藤良介モスクワ支局長は「百年の蹉跌 ロシア革命とプーチン」の長期連載に挑んでいる。6日付(第35回)で興味深いのは革命当時、「東京朝日」(現・朝日新聞)が社説で「露国民衆の無智にして雷同的なる、新しき煽動に不和するの常なる(中略)全露国は少時鼎沸(ていふつ)の禍乱時代を現出せんか」と、ボリシェヴィキ(後のロシア共産党)を罵倒していた話だ。
「後世の朝日新聞が、左派の代表的メディアとして、共産主義陣営に共感する報道を展開したのとは対照的に、ボリシェヴィキに対する憎悪が鮮明だった」と遠藤氏は言う。
後世の朝日新聞とはむろん、戦後の朝日を指す。米国に亡命したレフチェンコ元KGB(ソ連国家保安委員会)少佐は朝日について「不幸にもソ連に対して愛を感じすぎている。同情のあまり盲目になっている…(ソ連も)朝日新聞に対して好感情を抱いている」と証言している(82年12月、米下院秘密公聴会)。
◆自らの言説も不問に
その朝日は4日付の特集で「革命の掲げた理念と、共産党独裁の現実との差はあまりにも大きく、歴史的評価をめぐって論争がある」として世界への影響を論じている。
歴史的評価を言うなら、毎日のようにソ連国内の惨状を書くべきだが、これには沈黙し、自らの過去の言説(親ソ論調)も不問に付す。対照的に米国については「(ロシア革命は)米政府内に恐怖心を引き起こした。19年11月から20年1月にかけて、活動家ら4千人以上を逮捕。多くは正規の司法手続きを無視した『赤狩り』だった」と、まるでソ連以上の弾圧があったかのように書く。
日本については「シベリア出兵」を取り上げ、「(日本軍が)手当たり次第撃ち殺す、突殺(つきころ)すの阿修羅」とか「治安維持法を成立させて共産主義運動・思想の防圧」などと書き、「シベリア出兵というロシア革命への対応は、その後の大陸侵略の原型」と断ずる。
あきれた歴史認識だ。当時は第1次大戦の最中でシベリア出兵は英米の要請に基づく。それに「阿修羅」と言えば、アムール川河口のニコラエフスク(尼港)で赤軍パルチザンが市民6000人以上を虐殺した尼港事件を取り上げるべきだ。日本人居留民731人も皆殺しにされた。
ところが、朝日は尼港事件に一言も触れない。これを抜きに「侵略の原型」とするのは歴史の歪曲(わいきょく)だ。革命直後の皇帝ニコライ2世一家惨殺と尼港事件。その残虐な共産党の支部として日本共産党が設立されたので治安維持法が制定された。共産主義の惨禍を隠し、戦前の日本を「暗黒社会」と描くのも歴史の歪曲だ。
◆にじみ出る「ソ連愛」
朝日8日付社説は「ロシア革命 世紀を越えて問う足跡」とある。爪痕(つめあと)なら分かるが、足跡とは奇妙だ。足跡は良い意味(業績)で使われることが多いからだが、これは朝日の「ソ連愛」(レフチェンコ氏)の所産か。
本文には「(ソ連の)希代の『実験』は失敗したが、革命の歴史は、今後の世界の針路を探る手がかりを残した」とあるが、そんな手掛かりは思い当たらない。「本家ロシアでは、あの革命の輝きは失われている」ともあるが、「あの革命の輝き」など最初から存在しない。
ここにも朝日の「ソ連愛」がにじみ出ていている。ロシア革命100年で正体が一層、あらわになったようだ。
(増 記代司)