「ニュース女子」問題、一方的な「デマ」説

左派に歪められた言論空間

 月刊誌4・5月号で、左右両派の言論人が論考を発表しているテーマの一つに、「ニュース女子」問題がある。立ち位置が正反対の左右の論壇で意見が対立することは普通のことだが、この問題で際立っているのは左派の過剰でヒステリックな反発である。

 問題の発端は東京メトロポリタンテレビジョン(東京MXテレビ)が放送する情報バラエティー番組「ニュース女子」の今年1月2日放送。この番組では、リポーターが沖縄県東村高江のヘリパッド建設反対をはじめとした反基地活動の実態報告を行い、それにスタジオの識者がコメントする形だった。

 その内容は、違法駐車による道路封鎖、活動参加者への現金授受、逮捕されても生活に影響が出ない高齢者のデモ動員などについて報告が行われた。事情通の間では知られていた内容がほとんどだが、地上波テレビで放送されたのはおそらく初めてだったろう。

 そして、番組は過激な行動に出ている活動家たちを「テロリストみたい」と表現したり、活動の参加者が「日当」をもらっているのではないかと疑問を呈した。もちろん、事実なら反基地活動にとっては大打撃となる。反基地活動家や左派のジャーナリストが、番組を「デマ」「ヘイト」と決めつけ、放送内容を完全否定する言論戦を繰り広げるのは、それだけ深刻な内容だからだろう。しかし、彼らの主張には、デマであることの根拠が乏しいこと、そして番組関係者をはじめとした右派からの反論に裏付けと合理性があることから、逆に反基地活動の異常な実態を世に知らしめる結果を招いている。

 左派が言論戦の舞台に使っている月刊誌には「創」や「世界」がある。「世界」4月号は、過激な反基地活動をあおっているのではないかと、番組が批判の矢を向けた左派の市民団体「のりこえねっと」の共同代表・辛淑玉と、ジャーナリストの津田大介の対談を掲載した(「ヘイト報道―『何でもあり』でいいのか?」)。

 この中で、辛は「とにかく酷い内容でした。最初から最後までデマばかり」と断言。津田も「徹頭徹尾デマだけで構成された内容に、唖然としました」と語り、放送内容がデマであるとの印象を読者に与える発言を行っている。

 さらに、辛は「現地で工事を止めるために車両の下への命がけで潜り込む友人の顔や、今は長く拘束されている山城博治さんの顔が重なってしまって、本当につらかった」と語る。沖縄平和運動センター議長の山城博治は器物破損、公務執行妨害、傷害、威力業務妨害の容疑で、何度も逮捕されている人物で、今は保釈されている。

 評論家の篠原章は反基地活動の実態について、「米軍施設内への不法侵入や公道での車両の私的検問といった違法な活動を行うグループが存在することは紛れもない事実だ」と述べている(「沖縄の歪んだ言論空間」=「Hanada」5月号)。

 そればかりか、辛が違法行為をも含む過激な反対活動を扇動していた事実も指摘されている。動画製作者のKAZUYAが「お年寄りはただ泊まって、坐って、嫌がらせをして、みんな捕まってください」という演説(昨年9月、東京において)を示しながら、「犯罪教唆(きょうさ)まがいのことを述べている」と批判した(「辛淑玉氏の仰天演説」=「WiLL」4月号)。

 これだけでも、反基地活動の過激さが分かるもので、番組内容が根拠のないデマだという主張は、事実を隠蔽するためのレッテル貼りでしかないと言うべきだろう。

 左派が番組を攻撃する材料としている一つに、「日当」問題がある。「世界」の対談で、「デマ」とする根拠について触れたのは、番組が反対活動の参加者に「日当」が渡されているのではないかと疑問を呈したことについてだけ。津田が「日当」が出ているとの情報はかなり前に雑誌や夕刊紙に掲載されたが、いずれも匿名の情報源なので「真実なのかどうか検証しようもない」としたのだが、それだけではデマである根拠になり得ず、説得力に欠ける。

 一方、番組は「5万円」を支給するとしたチラシ(反基地派が東京で配布したもの)や、基地周辺で見つかったという茶封筒に「2万円」と書かれていた事実を示した上で、「日当」に言及したのだ。番組を製作した「DHCシアター」はその後、再度現地取材を行い、1月2日放送分の検証番組を製作しているが、その中では、ジャーナリストの大高未貴が日当をもらったという当人に取材したことを証言している。

 決定的なのは、辛が「五万円集まるごとに一人送る」ことを認めていること。番組は「それを悪意をもってねじまげて取り上げた」と弁明した。しかし、日当かどうかは別にしても、参加者に現金が渡っていたのは事実である。津田もこれは否定しようがなく、「『日当デマ』の『根拠』を結果的に与えてしまった部分がある」と、日当問題はデマではなく根拠があることを認めている。

 さらに、辛はカンパを集めて、「それで一六人に現地に行ってもらいました」としながら、「政府が投入している金額に比べれば、微々たるものにすぎません」と主張する。金銭は「日当ではない」と説明すればいいだけの話であるが、意味不明な言動を行って、自分たちの活動をことさら美化しようとする姿勢は、左派の独善性の表れではないか。

 番組の司会を務めたことで、左派のジャーナリストなどから「バッシング」を受けている東京新聞論説委員の長谷川幸洋は「Hanada」5月号に「独占手記『言論の破壊者』と批難された私」を発表した。その中で「もっと丁寧に取材を積み重ねて作るべきだった」としながらも、「シルバー部隊」「日当」「テロリスト」など6項目について番組内容を検証し「ヘイトやデマと言われる根拠はなかった」と結論付けている。

 声高に「デマ」を叫ぶ左派に対して、根拠を示しながら反論する右派。どちらに、説得力があるかは一目瞭然であるが、それでもデマと言い続ける左派の体質について、東京新聞論説副主幹から「ヒラの論説委員に降格」となった長谷川が「自分たちが正しいと信じる目的のためには、彼らは論理も道理も常識もない」「異論を許さず、目的優先で手段も理屈も選ばない。これも昔から左翼の本質である」と喝破している。

 もう一つ、注目したいことは、DHCシアターの検証番組は一定の説得力を持つ内容で、1月2日放送番組の視聴者だけでなく、右派・左派に限らず視聴すれば有益と思われるが、なぜか東京MXテレビが検証番組を放送しないことだ。

 放送しなかった理由については、長谷川は「私は間接的に耳にしてはいるが、ここで紹介するのは控える。それはMXの責任に基づく判断であり、番組司会者が代わって説明する話ではない」としている。同テレビが左翼の執拗(しつよう)な批判に辟易(へきえき)したのか、それとも株主の中日新聞社(東京新聞を発行する中日新聞東京本社の総本部)から圧力があったのか、あるいは忖度(そんたく)したのか。長谷川の降格は、事実上の処分で、「言論の自由」に関わる問題だが、同じ観点から同テレビの今後の対応にも注目したい。

 以上、指摘したように、番組がデマか事実かを議論する段階はすでに終わっている。今後は、我那覇真子(「琉球新報・沖縄タイムスを正す県民・国民の会」代表)が「反対派の違法行為や反対運動に苦しんでいる地元の声は一切記事にしてくれません」(「辛淑玉さん、答えてください!」=「Hanada」5月号)と嘆いたように、なぜ左派に都合の悪い事実が報道されないのか。今後、保守論壇はこの問題をさらに追究し、左派によって歪(ゆが)められている言論空間を正常化する必要がある。

(敬称略)

 編集委員 森田 清策