「最後まで全う」意思貫かれる


多忙な「象徴の旅」終わりに

 天皇陛下は「象徴としての務めを最後まで全うする」との意思を貫き、退位当日まで多くの行事に出席を続けられた。2016年8月8日に退位の意向をにじませたビデオメッセージを公表してから2年8カ月余り。全身全霊で臨んだ「天皇としての旅」が終わる。

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天皇、皇后両陛下は西日本豪雨の被災者らに声を掛けられた=2018年9月、愛媛県西予市の野村運動公園

 今年は陛下にとって即位30年と結婚60年の節目が重なる年で、皇居内外で多くの祝賀行事が行われた。3月12日に「退位及びその期日奉告の儀」が皇居で行われて以降は、神武天皇陵(奈良県)や伊勢神宮(三重県)での「親謁の儀」など、各地で退位関連の儀式・行事も相次いだ。

 陛下はこれらに加え、通常の公務にも例年通り出席。年間およそ1000件に上る内閣からの書類決裁も日常的にこなし、退位まで例年にも増して多忙な日々を送ってこられた。側近の一人も「陛下の御意向を踏まえ、出席予定の行事を減らすようなことはしなかった」と振り返る。

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天皇、皇后両陛下は国立沖縄戦没者墓苑で供花を終え、県平和祈念財団の関係者に声を掛けられた=2018年3月、沖縄県糸満市

 天皇陛下はこの1年、北海道から沖縄まで各地を訪れ、人々と交流されてきた。昨年3月には皇太子時代を含めて11回目となる沖縄県、同8月には日本の北端に近い北海道・利尻島を訪問。西日本豪雨で被害を受けた岡山、愛媛、広島各県や北海道地震の被災地も慰問し、住民らをいたわられた。

 特に退位を控えたこの1カ月は、訪問先の各地で人々から大きな歓迎を受けた。伊勢神宮参拝のため訪れた三重県では、沿道や駅頭に人があふれ、天皇、皇后両陛下の姿を見て涙を浮かべる人も。両陛下はどの場面でも笑顔で手を振り、歓声に応えられた。天皇としての皇居外での行事出席は、26日に行われた内閣府主催の「みどりの式典」が最後となった。