接種勧奨一時中止続く子宮頸がんワクチン 全国被害者連絡会事務局長・日野市議 池田利恵氏に聞く

死亡者の圧倒的多数は高齢者

 全身の痛みや運動障害など、重篤な副反応を訴える少女が大勢出たことで、接種の積極的な勧奨が一時中止となっている子宮頸(けい)がんワクチン。厚生労働省は副反応を「心身の反応」と結論づけたが、その原因解明や被害者救済は進んでいない。昨年3月に発足した全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長の池田利恵・東京都日野市議に、厚労省の対応の問題点などについて聞いた。
(聞き手=森田清策編集委員)

臨床試験も済まず/安全確認不十分のまま導入

ワクチン効力7年以下/10代の接種に疑問

400 ――池田市議がこの問題に関わるようになった経緯は。

 2009年、日野市議会で、当時世界的に流行した新型インフルエンザのワクチンを一刻も早く導入してほしいという趣旨の一般質問を行いました。ところがその後、「新型インフルエンザのワクチンが1本も使われずに1126億円分廃棄された」という新聞記事を見て大変驚き、事後調査しました。

 そのワクチンはカナダで広範囲の副反応を起こしていたにもかかわらず、厚労省の役人が「安全」と言い放って輸入し、結局1本も使わないまま廃棄したということでした。

 ちょうどその前後に、クローズアップされたのが子宮頸がんワクチンで、2種類あるうちの一つ「サーバリックス」と新型インフルエンザのワクチンは共にグラクソ・スミスクライン社製(本社・英国)でした。

 私は10年ほど前までは3人の子供を持つ専業主婦でした。子供の健康にはとても敏感でしたから、そこで深く調べたのです。

 ――どんなことが分かったのですか。

 ワクチン接種は簡単に言えば、薄めた毒を体内に入れることですから、それに感応して亡くなる方もおられます。圧倒的多数の命を守るという、ある意味“国防”という形で公衆衛生上接種されます。ということは、このワクチンはどれくらい効果があるのか、またそれによって確実に出るであろう被害者をどのように救済するのか、これらを国はどう想定しているのか。こうしたことを調査することが大事だと思いました。

 まず地元、日野市の実態を調べました。驚いたことに、平成21年の調査では、子宮頸がんによる死亡者は20代から50代までいませんでした。60歳以上で7人です。近隣の多摩市と稲城市でも日野市と同じような状況でした。

 全国を見ても同じで、20代で亡くなったのは平成21年24人。死亡者は圧倒的に高齢者が多い。さらに、子宮頸がんによる死亡者が増加していると言われていましたので調べると、女性人口10万人に対する死亡者の比率は、昭和25年が19・7に対して、平成21年は8・6と、半分以下に減っているのです。

 ――10代の少女にワクチン接種する意味がない、と。

 「子宮頸がん予防ワクチン」というのは当初、これを広めるために、推進派の人たちが付けた名前です。本当は、数多くあるヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、16型と18型の感染を防ぐ効果があるワクチンがサーバリックスです。つまり、がん自体の予防ではなく、その原因の一つとされるHPVの感染予防ワクチンです。

 ところが当時、確認されているワクチンの効力は6・4年と自治体の配布文書に記してありました。中学1年生(12歳)で接種すれば、20歳を過ぎた時には効力が続いているのか、確認されていません。それなのに10代の子供たちに、1000億円以上の税金を投入して接種させる必要があるワクチンなのか、と私は唖然(あぜん)としました。しかも、先行して接種していた海外では重篤な副反応が出ていると、インターネット上では家族と共に実名、写真入りで報告されていました。

 では、なぜこのワクチンが導入されたのか。厚労省がこれを導入する経緯を同省の資料で調べました。その結果、どんな状況で導入されたのかを国民が知っていたなら絶対に接種する人はいないという確信を持ったのです。

 ――厚労省の資料から分かったことは。

 平成22年の「第3回ワクチン評価に関する小委員会」でこう報告されています。

 「HPVワクチンを接種した集団において子宮頸がんが減少するという効果が期待されるものの、実際に達成されたという証拠は未(いま)だない」

 また、平成21年8月の「薬事・食品衛生審議会医薬品第二分会」資料にはこうあります。

 「子宮頸癌(がん)予防対策の一つとしてHPVワクチンの臨床使用を求める医療上の要望及び社会的関心が高まっております。このような背景を踏まえ、厚生労働省の指導により、国内臨床試験の終了を待たずに、平成19年9月26日に本剤の製造販売承認申請がなされております」

 つまり、効果が不確定で臨床試験も済まず、安全確認も十分できていないワクチンを、死亡率減少効果の検証のために少女たちに接種させるということです。

 ――昨年4月に予防接種法に基づく定期接種になりましたが、副反応を訴える少女たちが相次いだことで、同6月には厚労省は接種を積極的に勧めることを一時中止しました。この対応についてはどう評価しますか。

 多くの国々が接種している中で、接種勧奨の一時中止とはいえ、法律で決まった定期接種の流れを一度止めたことは優れた役人の判断だったと思います。しかも、世界に先駆けて、被害を訴える声に耳を傾ける姿勢は評価しています。

 ――今年1月、厚労省の専門部会が副反応は「心身の反応」であるとの結論を出しました。

 「心身の反応」という、接種した方の心の問題であると捉えられて大変ショックを受けた方々が多かったように思います。もっと科学的な検証に基づく発言がなされるべきです。

 ――厚労省は、副反応を訴える被害者が専門的な治療を受けられる医療機関として、新たに8病院を整え、19病院になりました。しかし、病院の対応にも問題があるとの声があります。

 拠点病院は整形外科およびペインクリニックです。ワクチンの副反応について、整形外科医は門外漢ですから、適切とは言えません。ペインクリニックは痛みがなぜ出てくるのか、どのような治療をしたらいいのか、という点では半分ふさわしいかもしれませんが、このワクチンの何が原因となって副反応が起きるのかを調べる科でないと、被害者の皆さんは満足しないでしょう。

 ――拠点病院は、どんな対応なのですか。

 被害者の方から、連絡会に苦情のメールがたくさん届いています。例えば、診察室に入るなり医師に「まずは子宮頸がんワクチンが原因だと考えることをやめることから始めましょう、と言われた」とか。

 また、「担当医がワクチンの副反応では絶対にない、と断言した」「ただの成長痛と言われた」「こんな状態は見たこともないし、あり得ない。精神科に行きなさい」など、最初からワクチンの副反応ではないという前提なのです。だから、被害者は10から20カ所の病院を回らざるを得ないのです。

 ――今後の活動の目標は。

 現在、各都道府県に支部を立ち上げています。すでに神奈川、群馬、北海道、埼玉、熊本、鹿児島の6支部が発足しました。これから千葉、東京、福岡、愛知、三重、岐阜、長野でも発足する予定です。

 ただ、このワクチンは日本だけの問題ではありませんから、世界中の子供たちを救う必要があると思っています。ワクチンの被害に遭っている子供たちが一日も早く回復してくることが一番の願いです。

 いけだ・としえ 被害者連絡会が発足してから1年4カ月たった。連絡会に寄せられた相談件数は8月1日現在、約940件、253人の登録。しかし、家庭の事情などで、表面化していないケースが相当あると考えられるから、この数字は氷山の一角にすぎない。3人の子供を持つ専業主婦から政治の世界に飛び込んだからには、副反応に苦しむ子供たちの存在を黙って見過ごすわけにはいかず、全国を飛び回る毎日だ。
 昭和33年、山梨県生まれ。早稲田大学大学院修了。日野市議会副議長など委員長歴任、現在は監査委員。
 全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会=TEL/FAX042-594-1337