森友学園副理事長に焦点合わせた文春、事件の背後をのぞく新潮

◆強烈な個性の持ち主

 「森友学園」騒動は安倍政権を揺るがす“大疑惑”に発展するのか―。

 これまで全く攻め手を欠いていた野党はここぞとばかりに、籠池泰典同学園理事長と首相夫人・安倍昭恵氏の国会証人喚問を求めている。“晒(さら)し者”にすることで「安倍一強」を崩したいということだろう。

 自民党は今のところ拒否の構えを崩していないが、週刊誌が根掘り葉掘り、森友学園周辺を嗅ぎ回って野党の援護射撃を買って出ているから、自民党が抗しきれるかどうかは分からないが、ここにきて突然、籠池理事長が退任を発表し、小学校の認可申請も取り下げたため、野党がこのまま攻め続けられるかどうかは分からなくなってきた。

 週刊文春(3月16日号)が「総力取材」している。焦点を当てたのは籠池理事長ではなく、副理事長・幼稚園の副園長を務める夫人の諄子(じゅんこ)氏だ。同誌は同氏の「強烈なキャラクターが、森友学園の小学校創設の原動力となり、国政を揺るがす一大疑惑に発展した」とし、彼女が「震源地」とみて集中的に取材した。

 諄子氏は森友学園創立者・森友寛氏の長女。保護者に怒鳴ったり、脅迫めいた手紙を書いたりするだけでなく、暴力事件で逮捕され、大阪地裁で罰金刑を受けたこともある「強烈なキャラクター」の持ち主という。

 同誌は長男にも取材しており、「『愛の爆弾』みたいな人で、感情が豊かすぎる。マンガみたいな人です」と肉親から見た姿も紹介する。「赤信号で歩いている人を見掛けると、車の窓を開けて、大声で『赤信号! ダメでしょ!』と注意していました」(長男)。普通の人なら思うだけにとどめておくが、この人は言ってしまうタイプらしい。

 報じられたように「教育勅語」暗誦(あんしょう)や運動会での奇妙な選手宣誓などの印象が強いが、「母は特に思想はなく、父を支えようとしているだけ」なのだそうで、これは意外でもある。

 とすると、この程度の強烈でちょっと厄介な副園長ならば、どこにでもいそうで、それほど問題視する必要があるのかとも思われるが、この人に見込まれたのが昭恵夫人だったことが今日の問題になっている。同誌は「昭恵夫人と籠池氏、森友学園の不透明な関係」は「本人の説明なしに疑惑が終息することはない」として、問題が長引くとの見立てだ。

◆狙いは「安倍潰し」か

 一方、週刊新潮(3月16日号)はこの問題が出てきた“背景”を探っており、文春とは違った深読みをしている。まず、なぜ鴻池祥肇参院議員が籠池夫妻の“陳情”を暴露したのかだ。鴻池氏は「学校法人の認可をおろさせたくないので、共産党に情報を提供」し、国会で追及させた。その狙いは「麻生氏再登板を見据えた安倍潰し」だというのだ。それが事実なら、これをこそトップにするべきだろう。

 さらに、首相に「直結する大疑獄が飛び出しそうだ」として、愛媛県今治市に岡山理科大学が獣医学部を新設する問題を取り上げている。今治市が「広大な公有地を無償譲渡し、なおかつ、2023年までの総事業費192億円の半分、96億円を補助金として負担する」というので、政治的力が働いたのではないかという疑いだ。

 同大の運営母体加計学園の加計孝太郎理事長と安倍首相は「40年来の旧友」であることから、「最強の政治力で便宜を図られたのではないかと疑惑の目が向けられても仕方あるまい」と同誌は疑惑を匂わす。

◆「衆院4月解散」説も

 こうなると「“伝家の宝刀”をチラつかせなければならないくらい、安倍総理は追い詰められ」て、そこで出てくるのが「衆院4月解散」説だ。籠池氏を国会喚問すれば、何を言い出すか分からないため、選挙をちらつかせ野党を牽制(けんせい)するという見方だ。これは報じるメディアの方も情報戦に乗っかっている。

 安倍首相の熱烈な支持者という籠池氏が安倍首相を窮地に追い詰めるのだとしたら、「贔屓(ひいき)の引き倒し」もいいところであるが、籠池氏の退任、申請取り下げで、国有地ディスカウント払い下げ問題も萎(しぼ)んでしまう。結局“大山鳴動してネズミ一匹”で終わるのだろう。

(岩崎 哲)