デジタル機器を活用した教育 推進派と慎重派

《 記 者 の 視 点 》

二極対立ではなく、相互の利点を生かし合う授業を

 児童1人に1台のデジタル端末機器が学校に配布されている。教員の働き方改革が叫ばれる昨今だが、旧態依然たる黒板授業を中心にする慎重派教員と、新しい物をどんどん取り入れるデジタル推進派の教師がいる。教員室で結構な“バトル”が展開されているという。二極対立の中で授業を進めるのではなく、相互の理解と良き点を生かし合い、子供の学習意欲を高める授業づくりをしたいものだ。

タブレット学習

タブレット学習

 慎重派の教員は社会科系の授業で、忙しい授業の間を縫って、手書きの“ポップ状”の教材を作成、黒板に張り付けたり、黒板に模範解答を書いたりするなど、時間と労力のかかる授業準備をしている。児童たちに教員の生の息遣いを伝えたいという思いからだ。この苦労が、理解を深め、学習意欲を高めると信じてのことだ。

 積極派の教員は世の中のデジタル化の流れに乗って、また、子供たちに“ゲーム感覚”で問題を出し、答えを導くという点では“今風”であろう。算数や理科の問題を画像で的確に考え方を伝え、算数の図形、立体の展開図などを学ぶときには適している。

 ただ、効率的な学びにつながるものの、画面で見ると「知った気」「分かった気」になってしまい、そこからの学び、次につながるものが、乏しくなることも言われている。また、仲間との学び合い、互いに分かった喜びを分かち合うということが少なくなってしまうという欠点もある。教員の働き方改革で言えば、先輩や学習教材会社が作成した既存の画像を加工して使うことで、授業準備の労力は減少させることができる。

 教える側の教員にもデジタル端末の活用にスムーズに入れる人、そうでない人がいるように、子供たちにも“得手”“不得手”がある。一人一人に合った教育環境を整えればよいが、集団学習になると、そうもいかない。推進派、慎重派ともに、相互の良い点を学び合い、授業に生かしていくコミュニケーションが重要になってくる。

 震災、コロナ禍などで、登校できない児童・生徒に対してオンライン授業を行う場合は、デジタル機器を使うことで知識や成績を向上させることに有効だろう。だが、児童・生徒を不登校から保健室登校、通常の学級登校に導くにはオンラインだけでなく、対面の家庭訪問などが必要になってくる。

 どこの会社・組織でも、大きな改革を行おうとするときは、慎重派と推進派の意見が食い違うことはよくある。大事なのは、子供の学ぶ姿勢が前向きになっているか、後ろ向きになっているかだ。分かる喜びを感じる授業を構築するには、相互の良い点を積極的に取り入れ、働き方改革に沿った授業を行うことだ。

 過労死レベルと言われる教員の仕事量軽減のためにも、教員免許がなくてもできることは、事務員、部活の外部指導者、ボランティアスタッフに任せ、教えるという“教師の本分”に集中できる環境づくりのためにも、そうした工夫をしたいものだ。

教育部長 太田 和宏