ストレス多い教育現場 コミュニケーション能力を磨こう

《 記 者 の 視 点 》

 神戸市須磨区の小学校で、教員による同僚教員への“いじめ”事件はマスコミで大きく取り上げられ、同学校に通う児童にも精神的ダメージを与える、大変痛ましいものとなった。「“いじめ”という段階ではなく、傷害罪だ」「教師という以前に人間としての問題だ」「あきれてものも言えない」「教員免許の取り消しだ」教育関係者だけでなく、さまざまな人が意見を述べている。

 今回のようなひどい、前代未聞の事例は、非常にまれなのかもしれないし、大方の教員は黙々と真面目に業務をこなしている。だが、校長や先輩・同僚によるハラスメント、いじめを受けたという教職員の声は、かなり多い。実際、全国で毎年5000人を超える教員が病気や精神疾患で休職扱いになっている。このうち、どれだけが“ハラスメント”なのか、判明していないが、想像を絶するストレスが教員の両肩にのし掛かっているのは間違いない。

 また、授業の準備や学年主任・教科主任、校長へのさまざまな報告、雑務といった忙しい業務の上に、「特別な教科 道徳」の導入、小学校での「英語」授業の拡充、指導要領に「主体的・対話的で深い学び」が示され、働き方改革が求められるなど、教員のストレスは増すばかりだ。

 中教審初等中等教育分科会で、同分科会の委員を務める西橋瑞穂・鹿児島県立甲南高校校長は「限られた時間しかないのに、学校に期待されていることが、あまりにも多過ぎる。新しいことを教師全体で共有するには研修会が必要だが、現状では時間をつくることすら難しい」と訴えた。通信情報技術(ICT)の活用と小学校の教科担任制についての論点整理で現場への配慮を求める意見が飛び出した。

 教員の研修会に参加していた小学校の教師に本音を聞いたところ、「あれも、これも、それも、と言われても、全てを完璧にこなすことは無理、順位付けをして月ごととか、年ごと、力を入れて実施していくしかない」と語っていた。

 荒波を越えて行くためには、児童・生徒との関係、学校での上司、同僚との関係などコミュニケーションスキルを磨くことだ、と語るのは臨床心理士の島崎美咲氏だ。児童・生徒の適性を良く見極め、長いスパンで見守り、一方的に否定しないことを挙げ、個々の児童・生徒に適した関係づくりが肝要だという。独りで解決できない問題は同僚や上司、法的問題なら、スクールロイヤーに相談することも解決への道筋だ。

 教員の間で多く見られる「うつ病」について、気分が落ち込む、不安・焦り、イライラ、飲酒量の増加、食欲不振・過食など症状はまちまち。「さまざまな原因はあるが、努力や頑張りで解決できるものではない。休養や精神科医の診療も必要」だと島崎氏は言う。教員の「うつ病」の原因は対人関係の悩みを挙げる人が多い。島崎氏は問題を抱えたときに親身になって相談できる、同僚とか上司、友だち・親戚、それ以外に人生の問題を相談できる「重要な他者」が必要だと語る。

 教育部長 太田 和宏